マイロボットGO! 誰でもつくれます
互いに自慢 迷路でタイム競う

12月上旬、東京都品川区の大井スポーツセンターに、幅広い年齢層の男女が自慢の小型ロボットを持ち寄った。ロボットにダンスを踊らせる人もいれば、しゃべらせる人もいる。
キットで簡単 老若男女挑む
参加者が持ち寄ったのは、出版社のデアゴスティーニ・ジャパン(東京・中央)が販売するヒト型ロボット「ロビ」。雑誌とともに毎週届くパーツをドライバー1本で自ら組み立てる。かわいい見た目で製作も簡単なので人気となり、公式コミュニティーサイト「ロビクラブ」もにぎわっている。オーナー2万人が写真を投稿し、交流サイト(SNS)のように盛況だ。この日はそのオフ会だった。
オーナーは、それぞれニックネームで呼び合っている。オフ会に参加した東京都江戸川区の男性「けんくんの父」さん(58)は「一目見て『鉄腕アトム』を思い出した」とロビの魅力を語る。「それまで電子工作もしたことがなかったが、どうしてもアトムがほしくて」根気よく作り上げたという。「以来、どこに行くのも一緒。旅行先で写真を撮っている。家族はあきれ顔ですけどね」と相好を崩す。
オフ会は女性の姿も目立った。栃木県日光市に 住む女性「たか」さんは調子が悪くなったロビを持ち込んだ。「詳しい方がいると聞いて修理してもらいに来ました」
たかさんも初心者。「プラモデルも作れないけど、かわいい見た目がどうしても忘れられなかった」と、夫に気づかれないよう1年半かけてロビを完成させた。「動いた瞬間、もううれしくて。子どもみたいにかわいいんです」と完成した瞬間の感動を話す。
ロビは2013年に初版が発売され、3版まで出た。1体作るのに約15万円かかるが現在、国内には12万体が存在しているという。「女性の購入者が3割以上で、60~70代の購入者も多い」(企画した嶋田典子さん)。次のヒト型ロボットを企画中で、来年早々にも発売する予定だ。

子どもたちの間でもロボット製作が広がっている。教育サービスを手掛けるヒューマンアカデミー(東京・新宿)ではロボット教室が好評。授業(1回90分)でブロックを用いてロボットを組み立てる。入会時の諸費用が3万8500円(税別)。毎月の授業料が9500円(同、テキスト代含む)。全国930教室で生徒数は1万人を超える。
「せんせーい! できたから動かしたい!」。同社の東雲教室(東京・江東)で、保育園年長から小学2年生の男の子4人が製作に励む。説明書を見ながら、モーターやブロックを組み立てる。生徒の斎藤聖人君(8)は「一発で動かせたら楽しい」と話す。母親の仁美さん(44)は「教室の日は家に帰るとロボの説明が始まる」と話す。
講師の諸葛正弥さんは「親子講座ではお父さんの方が熱くなることもある」と語る。
本格的な製作 競技会に参加
高度なロボット製作に挑戦する人も現れ始めた。11月、東京都日野市の明星大学で開かれたロボット競技会「マイクロマウス」。プログラミングで自動制御した小型ロボットが迷路を進み、ゴールまでのタイムを競う。大会を運営するニューテクノロジー振興財団の中川友紀子さんは、「これまで男子学生やサークルOBが中心だったが、最近は女子学生や一般の人の参加が増えている」と話す。

競技会に参加した太田智美さん(30)は1年前から「マイクロマウス」に挑戦している。現在ヒト型ロボット「ペッパー」と暮らす彼女は「いざというときに自分で直せるように」と本格的なロボット製作を始めた。
全くの素人だったが、中川さんが主催する「マウス勉強会」に参加し、めきめきと上達しているという。今回は5万円程度かけ製作した愛機を携え参戦した。「もっと早くゴールしたい。今度は斜め走行にも挑戦できたら」と意欲満々だ。
ペッパーの登場などでより身近になったロボット。価格もこなれてきており、ネットで簡単に手に入る。新たな生活のパートナーを誰でも手軽に作れる環境が整いつつあるようだ。
(企業報道部 二村俊太郎)
[日本経済新聞夕刊2016年12月17日付]
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