勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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目からウロコ… バルサ育成組織で発見の連続

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2016/12/16 6:30
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いつも同じ空気を吸って生きているだけでは発想がどうしても凝り固まりやすい。それをほぐすのが旅の効用というものだろう。私も先月、少し空いた時間を利用してスペインのバルセロナを訪れた。「たまには違う空気を吸ってみよう」という程度の軽い気持ちで出かけたのだが、ものすごい刺激と衝撃を受けることになった。

3泊4日の全行程の内、機中泊が2泊という強行軍だった。自費旅行の目的はいろいろな人と会って話をすること。バルセロナにあるヨハン・クライフ国際大学を卒業し、今はスポーツマネジメントを仕事にする的地亮さんがあれこれ骨を折ってくれ、短いながらも非常に濃厚な時間を過ごすことができた。

3泊のうち機内で2泊というと、バカみたいに思われるかもしれないが、ものは考えようだろう。肉体的には確かにきついが、機内だと電話はかかってこないしメールも見なくていい。食べ物も時間どおりに出てくる。思考を遮るものがないので、ぼーっとするのにも物事を集中して考えるのにも、思いのほか役に立った。

8~14歳の子供たちの練習視察

現地時間の昼すぎにバルセロナの空港に着き、旅装を解くと、その足でFCバルセロナ(以下バルサ)の8歳から14歳までの子供たちの練習を視察した。夜に練習が終わるとバルサのトレーニングメソッドをつくっている人たちと会食。仕事に追われる日本での日常から離れ、別角度からの情報がインプットされると、思いもよらないアイデアが次々に湧いてきて、自分でも驚いたくらいだった。

バルサの子供たちの練習は夕方から始まる。練習開始の1時間前くらいからクラブハウスにワゴン車がわんさか集まってくる。4人、5人の単位でワゴン車から子供が降りてくる。聞けば、全員がアカデミー(育成組織)の選手たち。誰でも入れるわけではないから、まさに金の卵たちということになるのだろう。

アカデミーに通う子供たちの自宅近辺とクラブハウスを往復するワゴン車の費用はすべてクラブ持ち。年齢が上がると片道2時間くらいかけて通う子供もいるが、距離の遠近に関係なく、とにかく無料。スクール費もタダで、とにかくバルサはアカデミーの子供たちの家庭には一切の経済的負担をかけないようにしているという。学費の面倒を見ている子供もいると聞いた。そうやって8歳の段階から「君はバルサの選手なんだぞ」というプライド満載で育てていくという。

一方でアカデミーには毎年、選手の入れ替えがあるという。より優れた子供がテストをくぐり抜けて入ってくると、既存のメンバーから誰かが振り落とされる。メンバーが固定されるとチーム内で序列ができてしまい、テングになる選手が現れるものだが、バルサはそれを許さない。年齢が上がるにつれ、クラブに通えるエリアが広がるから、埋もれた逸材が入ってくる可能性も高まる。年齢が上がるほど生存競争は厳しくなるわけだ。

U-16(16歳以下)日本代表の久保建英(FC東京)もバルサ時代、こんな激烈なサバイバルレースを毎年勝ち抜いていたのだろう。

バルサのアカデミーの練習を見ながら再確認したのは世界はどんどん進化し、奥深いということだった。育成の段階から、ものすごく負荷がかかった練習をどんどん課している。

あらゆるトレーニングに「敵」存在

負荷といっても身体的に、ではない。徹底的に「アタマ」に負荷をかけてくる。日本でもよくある、ハーフウエーラインから3人くらいで展開しながらクロスを上げてシュートまで持ち込むトレーニング。こんなシンプルな練習一つをとっても中身の濃さが日本とは違った。ディフェンスする側の状況、ボールの位置、味方の状況に応じて「考えながら」サッカーができている。ゆえに躍動感がまるで違う。日本にありがちな型にはまったパターン練習にまったく堕していかないのである。

あらゆるトレーニングに「敵」のいない練習はなかった。負荷や規制をかける人間がいない練習はキックの練習であって、戦術の練習ではないということだろう。コーチたちは選手にかける負荷を調節しながら、駆け引きや判断が必要な状況を次々につくりだしていく。それに応じて選手も適切なアクションをとる。選手が立ち止まり、のんびりプレーできる状況はほとんどなかった。

14歳のシュート練習を見ていると「インサイドターン」など、いわゆるパスを受けてシュートに持っていく体のさばきがほぼ完璧にできていた。「これしかできない」ではなくて、マークについてくるDFを見ながら、やり方を変えていく柔軟性を14歳にして身に着けていた。脱帽という感じだった。

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