2018年12月12日(水)

帝人、先端素材で介護用品

2016/12/13 6:30
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帝人は先端素材を使った介護用品を開発している。滑りにくい繊維を使って、高齢者の転倒防止につながる靴下などを実用化しようとしている。先端素材の用途拡大にあたっては、奈良女子大学と連携。介護現場で必要とされる製品の試作に取り組んでいる。

繊維を使った面ファスナー「ファスナーノ」は着脱音がほとんど出ない

繊維を使った面ファスナー「ファスナーノ」は着脱音がほとんど出ない

「少子高齢化や健康をテーマに、環境変化を先取りする」。12月上旬、帝人の鈴木純社長は大阪市内で、10年後を見据えた経営方針をそう語った。来期からスタートする中期経営計画に合わせ、複数の分野で事業の種まきを進める予定だ。

繊維分野では、極細繊維「ナノフロント」を高齢者施設で使う靴下などに応用する研究が進む。

ナノフロントは直径700ナノ(ナノは10億分の1)メートルの極細なポリエステル繊維だ。通常のポリエステルと比べて数十倍の表面積がある。摩擦力が大きくなるので、滑りにくいのが特徴だ。

高齢者の転倒を防止する製品として、2018年内の製品化を目指している。奈良女子大が持つ、足裏や手のひらにかかる圧力の変化を測る技術を活用する。高齢者施設での実証実験は、来年にも始める見通しだ。

帝人のエンジニアリングファイバー部の堀之内新一郎部長は「関西の他大学とも連携を進めている」と明かす。高齢者や介護用製品を広く開発する考えだ。

ナノフロントを使った介護用品は今年2月、面ファスナー「ファスナーノ」を開発済みだ。片面の太い繊維に、もう片面の細い繊維を絡ませて密着させる。

静かに取り外しできるのが特徴だ。隣で人が寝ている介護施設でも、着脱音はほとんど響かないという。力をいれる必要もなく、パジャマや枕カバーなどでの利用を想定する。

帝人は、繊維から製品まで一貫して手掛けることができる体制がある。堀之内氏は「いくら先端素材でも製品の形にできないと買いたい、と思ってもらえない」と話す。

帝人は特殊な繊維を作る技術を持つ。不足しているのは製品化のノウハウで「最近は医療従事者の声を製品開発のヒントにすることも多い」(堀之内氏)という。外部との連携を強めることで、市場のニーズを吸収しようとしている。

近年は、高齢者向け事業を強化している。

15年9月には、高齢者が自宅で医療や介護を受ける地域包括ケアの関連事業への参入を表明している。NTTのグループ企業が開発したシステムを活用し、患者の体温や血圧、脈拍数などのデータを、医師や看護師、ケアマネジャーらが随時閲覧できるものだ。

2030年の人口推計によると、国内人口は1億2000万人を割り、うち65歳以上の高齢者人口は3600万人に達する見通しだ。

鈴木社長は「変化に対応できるものだけが生き残る」と語る。帝人が持つ技術を使って、高齢者が必要とする製品をどれだけ実用化できるかが焦点になる。

(大阪経済部 千葉大史)

[日経産業新聞 12月13日付]

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