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投手のボール回転数から見える奥深い世界(前編)
スポーツライター 丹羽政善

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2016/12/12 6:30
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肉眼では絶対に見えないものがある。

それが見えたとき、何が変わるのか。

例えば、肘が下がると投げるときに肘に遠心力がかかって危険ということは、長く言われてきた。それはこれまで、投手コーチらが目で見て「気をつけろ」と投手に伝えていたわけだが、今や、パソコンの前に座り、リリースポイントに関する2つのデータ(上下、左右)を抽出するだけでそれを推測できる。リリースポイントが試合ごとにどう変化しているのか、数ミリ単位で確認することも可能だ。

大リーグ屈指の左腕カーショーは変化の大きなカーブも武器の一つ=共同

大リーグ屈指の左腕カーショーは変化の大きなカーブも武器の一つ=共同

プロゴルフの世界には一足早くそういう時代が訪れた。プロゴルファーには、スイングコーチがついているケースがほとんどだが、もはやコーチが別の場所にいても、スイングの映像を見なくても、指導できるようになっている。ゴルファーはスイングスピード、ボールの回転数、打ち出し角度、飛距離などを自分で計測。そのデータをコーチにメールなどで送れば、スイングに潜む問題点を指摘してくれるというわけ。もはやプロだけのものではなく、街の練習場でも同様の指導が普及している。

アナログな指導法に一石投じられないか

そのリリースポイントにしてもスイング解析にしても、大きさは野球のベース程度という小さな「トラックマン」というシステムが可能とした。

開発されたのは10年以上も前のこと。デンマークのナショナルチームでプレーし、若い頃はニック・ファルド(英国)、セベ・バレステロス(スペイン)らと戦ったクラウス・エルドルップ・ヨルゲンセンは当時、医療機器の世界で研究者をしていたが、ゴルフのスイング分析にも興味を持ち、30年以上も変わらないゴルフのアナログな指導法に一石を投じられないかと考えていた。

賛同した弟とともにアイデアを具体化し、レーダー技術の世界に身を置き、ミサイルの弾道追尾システムの開発にも関わったフレデリック・タクセン氏を引き込むと、彼の専門でもある対象物との距離によって周波数が変わるドップラー効果を利用したドップラーレーダー技術を応用することで、長年の構想を実現した。

当初の価格は20万ドル(当時のレートで約2340万円)。それを「ミズノ」「ナイキ」「ピン」「テーラーメイド」「キャロウェイ」の5社がセールスをかけてから2週間以内に購入を決断したという。その時点では、海のものとも山のものともつかないものではあったものの、いかにその技術が画期的であったかがうかがえる。

3年後の06年には米PGA(プロゴルフ協会)ツアーにも導入され、大会では少なくとも1ホールに設置され、データ収集に利用されるようになった。

リリースポイントのほか、投手が投げる球の回転数、打球の初速、本塁打の飛距離などを正確にはじき出すトラックマンを大リーグが本格的に活用し始めたのは昨年のこと。チームによっては08年ころから利用していたが、リーグが主導し、打球を追う野手の反応時間、移動距離、走塁のスピードなど選手の動きそのものを解析する「チャーランヘーゴ」と融合させて、「STATCAST」というシステムを開発。計測機器を全球場に設置したのが昨年だった。

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