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この選手にこの年俸? 相次ぐFA大型契約への疑問

今年のストーブリーグは例年に増して活発だ。巨人と日本ハムの間で大田泰示、吉川光夫というかつてのドラフト1位同士がトレードされたのに続き、両リーグの主力級がフリーエージェント(FA)権を行使し、続々と移籍を決めた。

楽天と契約し、星野仙一球団副会長(右)と笑顔を見せる岸=共同

FAは一定の期間、1軍で活躍した選手に与えられる権利だ。複数球団の評価を聞いたうえで、最も必要とされ、高い年俸をもらえるチームでプレーしたいというのは選手の自然な願望だ。ただ相次ぐ移籍の契約内容には、少々首をかしげたくなるものもある。

インセンティブ、多く設定する選択肢も

入団から10年、西武の主戦として活躍してきた岸孝之は故郷の仙台を本拠地とする楽天への移籍が決まった。4年契約で年俸は総額16億円(金額は推定、以下同じ)と報じられている。今季年俸(2億2500万円)からの大幅アップに加え、塩見貴洋がつけていた背番号11も譲り受ける。破格の待遇といっていいだろう。

岸が素晴らしい投手であることに異論はない。しかし2014年から3年間の勝ち星は13、5、9の計27勝。投球回数は14年の161回1/3が最高で、ここ2年は規定投球回数にも到達していない。4億円投手に値する活躍とはローテーションを1年間守っての15勝が最低ラインだ。故障がちな岸がこのハードルを越えられるだろうか。少なくとも表に出ている限り、激しい争奪戦があったわけではない。楽天にはドジャース・前田健太のようにベースを抑え、成果に応じたインセンティブを多く設定する選択肢もあったのではないか。

阪神の入団会見で金本知憲監督(左)とポーズをとる糸井=共同

オリックスから阪神への移籍が決まった糸井嘉男も三顧の礼で迎えられた。4年契約で年俸総額は18億円以上と伝わる。西岡剛から背番号7を譲り受けるのも岸とも共通している。今季は3割を打ち、53盗塁でタイトルも獲得した。糸井の能力の高さは疑いの余地がない。だがこの年俸を払うのであれば打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリー」ぐらいはやってもらわないと割に合わない。35歳という年齢も球団にはリスクになる。「へぇー」と驚く契約だ。

巨人にFA移籍した2投手も大型の複数年契約を結んだ。山口俊は3年7億円、森福允彦は2年4億円。日本ハムを出て巨人入りが確実視される陽岱鋼も4年10億円超の大型契約といわれる。3人とも戦力にはなるだろうが、近年の成績や直近の年俸をみれば、巨人は随分と大盤振る舞いをしたことがわかる。中日のかわいい後輩である平田良介もしかり。FA権行使を視野に入れた交渉の末、打率2割5分を割り込みながらも5000万円増の1億2000万円と大幅アップを勝ち取った。

こうした上積みこそがFAの強みといえばそうなのだろう。僕がどうこう言おうが、もらえなかったヤツのやっかみと言われればそうかもしれない。だが行きすぎた大型契約に副作用があることは指摘しておきたい。

複数年契約、選手に甘え出る場合も

巨人の入団会見で高橋由伸監督(中央)とポーズをとる山口俊(左)と森福=共同

複数年契約を結んだ選手にはどうしても甘えが出る。3年契約を結んだ選手であれば、1~2年目に活躍して3年目にこけるよりは、とりあえず3年目だけ活躍して新たな契約を勝ち取れればいいと考えるようになる。1~2年目の序盤に調子が悪いと、あきらめが早くなってしまうのもよくあることだ。過去の大型契約では期待通りの活躍をした選手よりも、期待外れに終わった選手の方が多数派だということを思い出してもらいたい。

もう一つは他の選手とのバランスだ。岸が加入する楽天のエース則本昂大の過去3年の勝利数は14、10、11だった。投球回数も毎年200前後に達している。プロでの年数は違うが、近年の成績では則本に軍配が上がる。その則本は今季比5000万円増となる2億円で来季からの3年契約を結んだ。FAを考慮しても2人の年俸が倍も違うというのは、適正なバランスを欠いている感が否めないのだ。

FAで笑う選手がいる一方で、もう少し上げてもらったらと思う選手もいる。すぐに思いつくのは中日の岡田俊哉だ。貴重な中継ぎ左腕として57試合に登板し、11月には侍ジャパンのメンバーにも選ばれた。それなのに来季の年俸は4000万円と上げ幅は600万円にとどまった。勝ちがつきにくい救援投手の最大の評価は試合数であるべきだ。勝利のアシストという役割をもっとしっかりみてあげてほしい。

選手の中には口べたで、交渉が苦手というタイプもいる。本当なら代理人を使えばいいのだが、古い体質が残る日本球界では代理人を立てるだけで球団から煙たがられてしまい、交渉で主導権を握れない。僕は1億円を超える交渉は、すべて代理人でいいと思っている。FA権を行使して他球団の話を聞いてみたくても、宣言したら残留は認めないと公言する球団もある。これなども制度の意義を理解していない。そうかと思えば、さっさと解雇した方がいいベテランをいつまでもそれなりの年俸で置いておく「癒着」が散見される。

限られた原資、適正に配分してこそ

「経営が厳しい」という球団幹部は少なくないが、僕にいわせれば、自分で自分の首を絞めているチームも少なからずあるように見える。「誠意」の証しとして必要以上の年俸を払うより、限られた原資の適正な配分を重視したチームづくりを目指す球団が増えた方が、球界は健全な方向に向かうと思う。

(野球評論家)

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