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重要文化財「永代橋」 アーチ内側から補強で長寿命化

日経コンストラクション

隅田川に架かる「永代橋」。関東大震災からの復興の象徴として、国の重要文化財に指定されている。東京都は橋を半永久的に守り続ける計画だ。幅80cmほどの狭いアーチリブ内で、地震時の座屈を防ぐ補強材の設置工事が進んでいる。

688本の補強材で座屈を防ぐ

人が作業する空間としては限界に近い。箱型断面のアーチリブ内は幅が80cmほど。作業箇所にたどり着くには、隔壁に設けられた幅40cmにも満たない点検用マンホールをくぐり抜ける必要がある(写真1)。

「自分の体格ではどうしても入れない場所がある。そこは同僚の技術者に施工状況を確かめてもらっている」。三井造船鉄構エンジニアリングの村中大助現場代理人はこう語る。

永代橋は1926年に竣工した鋼3径間カンチレバー式ソリッドリブタイドアーチ橋だ。東京都は塗装の塗り替えや伸縮装置の交換といった補修工事を実施してきたものの、外観上の大きな改変はしてこなかった。

それでも橋台と橋脚のコンクリートの健全性に問題はなく、車などの活荷重や疲労への耐久性も現在の基準を満たす。唯一、レベル2地震動に対する補強が必要だった。

都は2015年度までに主要な道路橋の耐震補強工事を完了。永代橋も地震時の水平荷重を負担する支承を橋脚上に新たに設けるなどの対策を施した。ただし、現在の道路橋示方書をもとに設計した場合、アーチリブのウエブの板厚は23.1mm以上必要なのに対し、現状は19.1mmしかない。レベル2地震動を受けると、ウエブが面外方向に座屈してしまう恐れがあった。

「国の重要文化財である永代橋は、原形に近い形で半永久的に保存することが求められている。万が一、地震でアーチリブが損傷すると、修復するのは困難だ」。都第一建設事務所補修課の本間信之橋梁構造専門課長はこう説明する。

既設リベットに似たボルトを採用

今回の工事では、足りない板厚の剛性を補強材で補う。補強材は長さ約1m、15cm角のL字形をした鋼製のアングル材だ。アーチリブの内側から左右両側のウエブに取り付ける。

補強材1本の重さは40kg。アーチリブ下面のマンホールから電動ウインチを使ってアーチリブ内に引き上げた(写真2)。

アーチリブには橋面を支える吊り材が約4.6m間隔で付く。内部は隔壁で縦横に仕切られ、吊り材と吊り材の間は上下2段の計6ブロックに分かれている。補強材は1ブロックにつき左右のウエブにそれぞれ1本または2本ずつ水平方向に設置する(図1)。アーチリブ全体に取り付ける補強材は688本に上る。

施工のしやすさを考えると、補強材はアーチリブの外側に設けるのが一般的だ。しかし、永代橋では外観のイメージが損なわれるのを避けるため、施工が困難でもアーチリブの内部に取り付ける構造を選択した。

ウエブに約13cm間隔で孔を開け、高力ボルトで補強材を接合する。この際、ボルトの頭をアーチリブの外側に配置。既設のリベットが無数に並ぶなか、新設のボルトが目立たないように、頭のサイズがリベットに近いタイプを採用した(写真3~写真5)。

補強材をウエブに溶接する方法は採用しなかった。永代橋に使われる鋼材は溶接を想定しておらず、無理に溶接すると割れなどが生じる恐れがあったからだ。

(フリーライター 大村拓也)

[日経コンストラクション2016年11月14日号の記事を再構成]

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