2018年5月23日(水)

プラットフォームを「隠れみの」 DeNA大炎上の本質
ブロガー 藤代裕之

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2016/12/8 6:30
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 情報を作る単価は、記事1本当たり数千円、場合によっては数百円というものまである。キュレーションサイトなどの事業者は「適切に作成してもらう」と言ったところで、外部ライターの立場からすれば、この値段でまともに仕事をしていたら大赤字となる。当然、内容も手抜きになる。

 一時期は経済産業省が「IT(情報技術)を活用した新しい人材調達の仕組み」として支援したクラウドソーシングは、仕事を受注する人も、出来上がった記事を読む人も、不幸になる仕組みだった。

医療サイト「WELQ」などに続き、12月7日には女性向けサイト「MERY」も全記事を非公開化した(画像は公開時のもの)

医療サイト「WELQ」などに続き、12月7日には女性向けサイト「MERY」も全記事を非公開化した(画像は公開時のもの)

 このような仕組みは真面目な事業者を市場から淘汰していく。情報の正しさや妥当性を確認する作業には手間とコストがかかるため、ビジネスモデルの構築が難しい。次第にネット上には使えない情報ばかりが広がるようになった。

 ニュースサイト「TechCrunch Japan(テッククランチ・ジャパン)」の報道でDeNAの守安功社長は、著作権違反のコンテンツをばらまいて収益を上げていた悪質なバイラルメディアの運営者をWELQ立ち上げ時に採用していたことを明らかにした。分かった上で情報汚染の仕組みを構築したのは相当悪質だ。

■情報やニュースの価値にタダ乗りする

 DeNAが問題を起こすのは初めてではない。2012年にはソーシャルゲームのコンプリートガチャ(コンプガチャ)問題で批判を浴びた。対応が遅れるなど不誠実な対応で、規制強化を呼び込み、大きな収益を上げていたソーシャルゲーム事業が悪化した。また同じことを繰り返しているように見える。

 グレーゾーンで荒稼ぎし、批判されれば引っ込めるという焼き畑ビジネスを展開するのはDeNAに限らない。情報に関してネット企業は問題を起こし続けてきた。それがステマだ。

 ステマとは、ステルスマーケティングの略で、消費者に知られずマーケティング活動をすることだ。今回のキュレーションサイト騒動も、読者側から見れば個人の発信や信頼できる情報と思っていたものが企業によって乱造された不確実情報だった。

 日本で最初にステマが話題になったときも、検索エンジンがからんでいた。やや古い話だが2009年にグーグル日本法人が新サービスのプロモーションで、ブロガーに有料で記事を書かせ、検索結果のランキングを上昇させたことがある。しかし、この手法自体がグーグルのガイドラインに違反しており、グーグル本社から日本法人がペナルティーを科されるという笑えない展開となった。食べログの評価が金で買われていたり、芸能人のブログに書かれた商品が広告だったりしたこともある。

 これらステマとキュレーションサイト騒動の共通点は、読者が個人の自由な発信と考えている情報の「誤認」を利用し、その信頼をお金に変えるビジネスという点だ。ネット企業も広告代理店も広告主も、これまで積み上げてきた情報やニュースの信頼や価値にタダ乗りし、それを切り売りしてビジネスにしてきた。その中で無視されたのは、読者、消費者の存在だ。いまこそ構造的な問題に目を向け、業界全体で健全化に取り組むべきだ。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://gatonews.hatenablog.com/)を執筆、日本のアルファブロガーの一人として知られる。

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