2019年6月17日(月)

[FT]イタリア、改憲否決で銀行改革の遅れ懸念(社説)

2016/12/6 15:00
保存
共有
印刷
その他

Financial Times

マッテオ・レンツィ氏がイタリアの首相になったのは2014年2月、与党・民主党内で前任者のエンリコ・レッタ氏に反旗を翻しての政権掌握だった。マキャベリ流の策謀だったが、イタリアを慢性的な失政という病から救い上げるのに必要なビジョンと活力と政治手腕を持つのは自分しかいないと、レンツィ氏は正当化した。そして今、レンツィ氏を首相の座に押し上げた強い自信があだになってしまった。

イタリアの有権者が4日の国民投票で拒否した憲法改正のメリットはともあれ、レンツィ氏が投票結果に自らの進退をかける必要はまったくなかった。レンツィ氏は国民投票を自分への審判にしたことで、イタリア国民が経済不振と無能で利己的な政治家に対して募らせる怒りをぶつける扉を開いてしまった。投票結果は反対票が約6割に達し、レンツィ氏は世論調査の予想を超える大敗を喫した。もはや辞表を提出する以外に選択の余地はなかった。

とはいえ、改憲案の否決とレンツィ氏の転落はパニックを引き起こすものではないはずだ。イタリアの政治システムを不安定化させるには及ばず、ユーロ圏と欧州連合(EU)の存続を脅かすものでもない。むしろ、この結果は一つの重要な側面でイタリアのためになる。7月に施行された全く見当違いな改正選挙法に関して、レンツィ氏の後継首相は大幅な改正案を議会で通そうとするはずだからだ。

その改正で、下院選で勝利した政党に議席を追加配分する規定が撤廃されるのはほぼ確実だ。それにより、世論調査の支持率で民主党に肉薄する反体制政党「五つ星運動」が議会で主導権を握ることは阻止される。イタリアをユーロ圏から離脱させるという五つ星運動の生半可な考えに眉をひそめ、同党が6月の選挙で市政を掌握したローマで引き起こしているひどい混乱に困惑している人々はすべて安心するだろう。レンツィ氏の敗北が国政の鍵を五つ星運動から安全に守ることにつながるのだ。

■次期政権は銀行部門への対処を

国民投票の結果から生じる危険は、主にイタリアの銀行に関わる。イタリア3位の銀行で最も経営が悪化しているモンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナは、外国投資家の支援を受けて50億ユーロの資本増強をする計画だが、国民投票結果のあおりで実行が難しくなる。モンテパスキの問題解決への見通しが不確かになれば、増資策の取りまとめと、他行が何としても必要としている不良債権処理が遅れるリスクが高まる。

とはいえ、レンツィ氏の辞任がイタリアの民主主義について心配すべき理由にはならないのと同様に、モンテパスキの問題もイタリアの金融システム全体に関わる銀行危機の兆候ではない。イタリアの金融システムは困難な状況に陥っているが、必要な増資額は手に負える範囲内だ。イタリア政府が公的資金の注入や一部銀行の閉鎖が必要であると判断した場合には、EUは政府支援やベイルイン(銀行の破綻時に債券保有者や株主らに損失を負担させる)の規則の適用に柔軟性を示さなければならない。特に銀行債を保有している多くのイタリア市民は、補償基金を通じて十分に損失から保護される必要がある。

銀行の不安定化が広がるのを防ぐうえで、イタリアの政治家は新政権が早期発足すると金融市場に自信を抱かせる必要がある。最低でもクリスマス前が期限だ。レンツィ氏の後継首相は誰であれ、銀行部門の脆弱さに対処し、適正な内容の選挙法を成立させる決意をはっきりと示すべきだ。そうすれば、イタリアはレンツィ氏の引責辞任による悪影響を抑えられる。

(2016年12月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報