2018年2月20日(火)

[FT]SMAPと重なる疲弊したサラリーマン

FT
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2016/12/2 6:30
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Financial Times

 終わりは近い。カウントダウンを1日単位で数える人もいれば、1時間単位で数える人もいるだろう。何人かの熱狂的ファンは、分刻みで計算するかもしれない。だが、運命を避けられない。日本一のボーイバンドは解散する。

都内の通勤客。職場の規範を変えようとする努力があっても、根底にある文化を変えるのは難しい

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 グループが所属する芸能事務所が夏に出した重大な公式声明によると、「SMAP」のメンバー5人は12月31日の深夜をもって別々の道を歩み始める。日本のエンターテインメント産業の頂点に28年間君臨した末に、疲れ果て、反目しながら旗を降ろす。ファンにとっては、ひどいショックだ。日本にとっては、仕事についてや、強制すること、団結することについての厄介な問いを自問していたさなか、有名人の格好の事例が加わることになる。

 商業的に結成された日本のバンドは大抵、ハト時計の癒やしの音のように、表舞台にポッと現れては消えていく。SMAPは全く対照的に、長寿を極めた。

 SMAPと所属先のジャニーズ事務所が切り開いたメディアでの地位がどれほど重要か、言葉を尽くしても尽くせない。週に1度のテレビ番組にグループとして出演し、個人として夜のドラマやコメディー、クイズ番組、トークショーに出演する。アルバムの売り上げ、テレビ出演、広告契約でいくつも記録を打ち立てただけでなく、近代の日本そのものの物語の一部になった。

 SMAPは1980年代のバブルの頂点にかけて結成され、以来(初期の小さな再編の後)、ずっと同じメンバーで活動を続けてきた。アイルランドのボーイバンド「ウエストライフ」の2倍長続きして、英ロックバンド「ローリング・ストーンズ」の半分持った格好だ。

 キムタク(木村拓哉さん)、ゴロー(稲垣吾郎さん)、クサナギ(草彅剛さん)、シンゴ(香取慎吾さん)、ナカイ(中居正広さん)が中年になるまでトップに君臨したSMAPは、国民心理の形成期、つまりバブル崩壊後のデフレ時代をまたいだ。彼らの曲の歌詞は学校の教科書に登場する。SMAPは多くの大手日本企業の商品を宣伝し、2011年の東日本大震災を受けて始まった慈善活動の顔でもあった。長年、SMAPは勤勉と調和という日本の理念を体現しているように見えた。

■SMAPと会社員の3つの類似点

 錯覚だった――少なくとも最近は。解散したいという願望が今年1月に明らかになったとき、SMAPの世界にかすかな毒性が感じられた。メンバーは物議を醸す事務所移籍を巡り、もめたとされている。8月に「離婚」が正式に決まってからは、好感していたのに裏切られたという意識が国中に広まった。

 だが、こうした事態がどこから来たのか、日本人はよく知っている。なぜなら、あまりに多くの人が毎日、この「自分版」を生きているからだ。

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