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モラルなし DeNA医療情報サイト

ディー・エヌ・エー(DeNA)は11月29日午後9時、運営する健康情報サイト「WELQ(ウェルク)」の全記事を非公開にすると自社サイト上で発表し、即時に実施した。同サイトを巡っては、掲載記事の医療情報に医学的に根拠のない誤った内容が多く含まれているとの指摘が専門家などから相次いでいた。人体の安全性に関わる繊細な情報の取り扱いに問題はなかったのか。

11月29日夜にウェルク非公開化を発表した

サイトの再開時期は未定。同社は近く守安功社長をトップとする管理委員会を設置し、事態を検証する。医学の専門家による監修体制を整備し、再開を目指すという。11月30日のDeNAの株価は2営業日続落し、終値は前日比30円安い3485円となった。

ウェルクは2015年10月にサービスを開始。DeNAが外部執筆者に依頼した記事やサイトに登録した利用者による自由投稿で構成していた。

しかし、その記事の内容には問題が多かった。例えば「ラクトフェリン」という健康食品成分に関する記事では「放射能保護効果がある」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)にも効果を発揮する」などと記し、「肩こり」について解説した記事では、「霊のしわざかもしれません」などと、医学的に根拠がない情報が掲載されていた。

これらの記事はグーグルなど検索サイトで上位にくるケースが多かったため、「健康被害が出る」と問題視する意見が9月頃からネット上などで増えてきた。11月28日には東京都の福祉保健局健康安全部がDeNAに対し、一連の記事についての説明を求めた。

 実はDeNAによる医療情報サイトはウェルクが初めてではない。14年10月に、子会社で個人向けの遺伝子解析事業を手掛けるDeNAライフサイエンスが「Medエッジ」と題したヘルスケア情報を扱うサイトを開設。著名な医師を監修に迎えて、医学論文などを基に医療情報を提供していたが、16年2月にウェルクに吸収された。

医学的な知識と執筆力を持つライターはそう多くはなく、その記事内容をチェックできる人材も少ない。つまり、医学的に正確な情報を供給するのには高いコストが必要となる。当時の関係者はMedエッジが高コスト体質だったことを認めるとともに「吸収されたとき、現在のような質の記事が掲載されることは予想できた」と話す。

DeNAが効率に軸足を置きすぎた姿勢は否めない。「モバイルゲームと並んで収益の柱になる事業だ」。守安社長はウェルクなど10媒体を束ねるキュレーションプラットフォーム事業に大きな期待をかけてきた。14年からの先行投資が実を結び、今年9月には単月黒字を達成。「18年3月期には四半期ベースで10億円以上の黒字にできる」と意気込んでいた。

主力事業であるモバイルゲームの後退で、16年3月期の連結営業利益は198億円とピークの4分の1近くまで縮んだ。自動運転や遺伝子検査など将来に向けた種まきに取り組んでいるが、こうした事業が芽吹くのはまだまだ先。だからこそ、短期の黒字化が見越せるキュレーション事業の期待感は高かった。

だが、医療に関する情報に誤りや嘘があれば、閲覧した一般人に健康被害が発生する可能性があるという点に考えが及ばなかったのだろうか。

医薬品医療機器法では、医薬品や医療機器などについて虚偽や誇大な広告を提供することを禁止している。製薬会社などは業界団体のガイドラインへの対応も含めて、極めて慎重に広告の文言を選んでいる。今回の事態はリスク管理やコンプライアンス(法令順守)というより、それ以前のモラルの問題だ。

(企業報道部 野村和博、新田祐司)

[日経産業新聞 12月1日付]

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