「スマホにできない」追求 JVC、スポーツに託す事業転換

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2016/12/20 6:30
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日経テクノロジーオンライン

初代iPhoneの登場から約10年。国内でも普及率が約7割に達したとされるスマートフォン(スマホ)は、かつて日本の電機メーカーの"最後の砦(とりで)"とも言われたデジタルカメラ事業に大打撃を与えた。

カメラ映像機器工業会(CIPA)の調べによると、2015年のレンズ一体型デジカメ(コンパクトデジカメ)の世界市場は、出荷台数ベースで前年比約25%減と大きく落ち込んだ。

スマホに市場が侵食されているのはデジカメだけではない。動画撮影機器、つまりデジタルビデオカメラも大苦戦している。国内の家電量販店の実売データを集計している「BCNランキング」(BCN)によると、デジタルビデオカメラの年間販売台数は2012年をピークに、2015年はそれに対して4割減と急速な勢いで市場が縮小している。

■ソリューションビジネスへの大転換

もはや単価が下がりすぎてハードウエア単体では利益を追求できない――。

ソニーパナソニックとともにビデオカメラ市場をけん引してきたJVCケンウッドも、本業の窮地に頭を痛めている。

同社は2015年5月、中長期経営計画「2020年ビジョン」を発表した。このなかで、2020年度に向けてこれまでのハードウエアの販売からサービス・ソリューションの提供を中心とする「顧客価値創造企業」への転換を表明。その一貫として「JVC×Sports」というキーワードを掲げて、スポーツ事業に力を入れている。

図1 コーチングカメラソリューション用の高速カメラ「GC-LJ25B」。カメラの上部に付いているのが無線ユニット。無線ユニットは共同開発したスポーツセンシングの開発品。再生アプリは無線/iPadパッケージがスポーツセンシング、有線パッケージがJVCケンウッドが開発。なお、スポーツセンシングも同様の製品「スポーツコーチングカム」(型番は「GC-LJ20B」)を販売中(写真:JVCケンウッド)

図1 コーチングカメラソリューション用の高速カメラ「GC-LJ25B」。カメラの上部に付いているのが無線ユニット。無線ユニットは共同開発したスポーツセンシングの開発品。再生アプリは無線/iPadパッケージがスポーツセンシング、有線パッケージがJVCケンウッドが開発。なお、スポーツセンシングも同様の製品「スポーツコーチングカム」(型番は「GC-LJ20B」)を販売中(写真:JVCケンウッド)

ポイントは、自社で培ってきた映像技術を生かして"スマホにできない"ソリューションを開発する点にある。

最近ではスマホの動画撮影機能もスローモーション再生に対応するなど高度化しており、スポーツの現場でフォームのチェックなどに使われることも多い。簡単で追加コストが不要なのも大きなメリットだ。

半面、"かゆい所に手が届かない"ことも多い。JVCケンウッドは自前の映像技術を活用し、スポーツの現場の細かい要望に応えるソリューションに活路を見い出そうとしている。

同社がこれまでに投入したサービスは3つ。「コーチングカメラソリューション」「遅延システム」「スコア重畳システム」である。このうち、既に正式販売しているのが「コーチングカメラソリューション」である。

ただ、スポーツに特化した製品開発においてはある意味"門外漢"だったJVCケンウッドが、ここまで短期間に複数のソリューションを単独で開発できたわけではない。背景には、センサーや無線技術を有し、スポーツに特化した製品開発の実績がある福岡市のベンチャー企業、スポーツセンシングとの協業がある。

スポーツセンシングは2009年ごろからセンサーを活用した製品を開発し、スポーツ関係の大学・研究機関などに販売。それを通じてスポーツ競技団体とのネットワークを構築してきた。その流れで、「スポーツの現場にセンサー製品を納入するにはビデオカメラの技術が必要なことを知った」(社長の澤田泰輔氏)という。

コーチングカメラソリューションについては、澤田氏が温めていた「タギング」などのアイデアをJVCケンウッドに持ち込み、同社がその機能をビデオカメラに実装した。遅延システムも現場からの案件をJVCケンウッドに相談し、同社が製品に仕上げたという。

■タギングで必要なシーンのみ抽出

トップアスリートの世界では、試合やトレーニング時の映像を撮影して分析するのはもはや"常識"。ところが、複数のカメラを使って多視点でフォームを分析したり、チェックしたいシーンだけを素早く抽出したりするのを、簡単にできるシステムは存在しないという。コーチングカメラソリューションは、こんな現場の悩みに応える(図1)。

最高で600fps(フレーム/秒)に対応する高速カメラを遠隔から無線で制御して、多視点で選手の動きを撮影する。撮影中にパソコンのアプリ上で「タギング(タグ挿入)」することで、映像から必要なシーンのみを抽出して再生できる(図2)。

図2 システム構成。パソコンから無線で複数台のカメラを制御。撮影した映像をパソコンに取り込んで、タグ付けしたシーンを再生する。カメラは通常50m離れていても制御できる。価格はカメラ1台と無線ユニット、専用アプリ付きで35万円(図:JVCケンウッド)

図2 システム構成。パソコンから無線で複数台のカメラを制御。撮影した映像をパソコンに取り込んで、タグ付けしたシーンを再生する。カメラは通常50m離れていても制御できる。価格はカメラ1台と無線ユニット、専用アプリ付きで35万円(図:JVCケンウッド)

例えば、図3のように陸上選手を前方と横に設置した2台のカメラで撮影し、ハードルを飛び越える瞬間だけを切り出して2つの映像を並べて再生。フォームを見比べながらチェックできる。このアプリはスポーツセンシングが開発した。

図3 複数のカメラで撮影した映像をアプリで同期再生しているところ。選手のフォームを多視点で分析できる(図:JVCケンウッド)

図3 複数のカメラで撮影した映像をアプリで同期再生しているところ。選手のフォームを多視点で分析できる(図:JVCケンウッド)

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