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石灰石から印刷物や容器 新素材の用途探る

素材開発のTBM(東京・中央、山崎敦義社長)は、紙やプラスチックを代替する自社開発の新素材について、凸版印刷と用途開発することで合意した。素材「LIMEX(ライメックス)」は石灰石と樹脂でつくられ、水にぬれても溶けない。紙市場をよく知る凸版が、技術ライセンス料を支払いライメックス製品群を開発していく。

印刷物やパッケージ、真空成型トレーなどに加工できる

TBMと凸版印刷は2017年3月まで共同開発の内容や製造方法について検討する。凸版印刷はTBMに対し、同月まで技術を利用するライセンス料を最大15億円支払う。ライメックスを使った印刷用の製品の製造、販売を目指す。

凸版印刷がTBMと組んだ理由について、糸谷祥輝ビジネスイノベーション推進本部長は「川上の材料を自社で製造し、印刷や加工まで一貫した生産体制を構築できる」と語る。

同社がとりあつかう紙やプラスチックの多くは、製紙メーカーや化学メーカーから仕入れる。水にぬれても溶けず、印刷もできる新素材は、紙やプラスチックでは満たせなかった需要を補えるため、需要家に新たな提案ができる。凸版印刷の営業が、印刷物や容器の営業先にライメックスを提案する。

糸谷本部長は「企業の環境意識が高まっているためライメックスの需要は拡大する」と見込んでいる。

企業は、石油由来の食品容器の使用を減らしたり、生産プロセスの中で二酸化炭素排出量の少ない印刷物の採用に動いたりしている。環境に配慮した印刷物を認証する制度もある。水も石油由来原料も使わないライメックスの潜在的な顧客となる。

TBMは石灰石の生産地に近い宮城県白石市にライメックスの工場を構えており、年産能力は最大6千トンある。増産を進めており、20年までに同県多賀城市に年産3万トンの工場を新設する。

ライメックスの材料の半分は石灰石などの無機物が占める。生産物によるが、6~8割の石灰石と2~4割の樹脂で紙の代替製品が製造できる。

生産工程はまず石灰石を砕いて粉末とし、ポリプロピレンなどの樹脂を混ぜ合わせる。材料を高温でシート状に引き伸ばせば、紙のように利用できる。押し固めてプラスチックのトレーのようにも加工できる。

インキで印刷できるため名刺、ポスター、カタログなど印刷物として利用できる。耐水性が強く屋外や水中、浴室といった場所で使える。

樹脂を混ぜて延伸加工を施すと紙のようなかたちに

生産工程で水や紙パルプの消費量が少ない。普通紙1トンを作る場合は樹木を約20本、100トン程度の水が必要となる。紙に比べライメックスは水の消費量が50分の1以下に減らせる。また、プラスチック代替品として使えば、石油由来成分を6割は減らせる。

TBMの山口太一執行役員は「凸版印刷の印刷技術や容器の加工技術、大量生産、販売のノウハウを活用できる」と語る。紙や容器の他に自動車パーツや建材など新たな用途を模索していく。

 石灰石は世界中に多く埋蔵されており、日本でもほぼ全てを自給できる。約300の石灰石の鉱山が稼動していて、主にセメント材料に使われている。
 中国やインドといった新興国は、紙やプラスチックの市場拡大が予想される一方、水資源の枯渇が懸念され、ライメックスが注目される素地はある。TBMの山口執行役員は水の少ない中東での引き合いも強いと話す。
 ライメックスで名刺を作れば、1箱(100枚)あたり10リットルの水を節約できる。長期的に水や石油の資源を守る観点からすれば、ビジネスパーソン1人が新素材でできることは意外に大きい。
 ライメックスの価格は1キログラムあたり500円となっており、紙に比べて割高だ。機能を保って価格を抑えることが、企業の社会的責任(CSR)以上の用途開発への近道になる。

(企業報道部 荒尾智洋)

[日経産業新聞11月25日付]

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