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アスリートファーストでなくリスペクトこそ必要
編集委員 北川和徳

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2016/11/25 6:30
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2020年東京五輪・パラリンピックをめぐる会場見直しやコスト削減に関する議論を聞く時、必ず登場する決まり文句に「アスリートファースト(選手第一)」がある。この言葉の使い方にいつも違和感を覚えている。

小池百合子東京都知事はアスリートファーストとの言葉を使うが…=共同

小池百合子東京都知事はアスリートファーストとの言葉を使うが…=共同

計画通りの会場整備を求める側とコスト削減のために見直しを訴える側の双方の主張の根拠が「アスリートファーストの視点から考えれば」という同じ理由であることも珍しくない。それぞれが深く考えずに勝手に自分に都合良く解釈して使っているようだ。アスリートファーストとは、いったい何を意味しているのだろう。

シンプルに考えれば、アスリートファーストとは大会に出場する選手が最高のパフォーマンスを発揮できるように最適な環境を整えるということだろう。華美で豪華な施設など必要ない。競技に適した使いやすい会場と練習場があればいい。選手村も簡素で構わないが、安全で快適に過ごせることが不可欠な条件。移動が負担にならないように競技会場には近いほど良い。多くの人々がこんな認識を持っていると思う。

アスリートでなく競技発展が第一?

海の森水上競技場の完成予想イメージ(東京都提供)=共同

海の森水上競技場の完成予想イメージ(東京都提供)=共同

だから、酷暑となる東京の夏に開催される五輪はアスリートファーストに反する最たるものと考えられる。巨額の放映権料を払う米テレビ局の視聴者に合わせるために競技時間が午前中に変更されるなど、許しがたい暴挙ということになる。ところが、アスリートを抱える競技団体、時に国際競技団体(IF)が要求するアスリートファーストはかなり違っている。

アスリートというよりも競技ファースト、競技第一とでもいうべきか。それも大会時の競技環境よりも、競技の将来の発展が優先事項となっているようだ。ほとんどの競技にとって五輪は最も注目されるイベント。五輪会場は競技の新たな開催拠点にしたい場所だから新設を希望する。ビジネス的な価値を高めるため、観客席にも規模や豪華さを求める。視聴者をひき付ける映像の制作のため、競技自体にはまったく必要のない設備まで要求する。

日本ボート協会の木村新理事長。「海の森」の整備を望む=共同

日本ボート協会の木村新理事長。「海の森」の整備を望む=共同

真夏の五輪だって競技の発展を考えれば仕方ない。世界中のより多くの人に注目され、テレビを通じて楽しんでもらうことがメジャー化につながるからだ。具体的なお金の話をすれば、国際オリンピック委員会(IOC)に流れ込むテレビ局や協賛企業からの巨額の資金は、五輪時の観客数やテレビ・ネットを通じた視聴者数などによる競技の格付けに従って各IFにも分配される。たくさん集客できる施設や魅力的な映像制作のための設備をIFが欲しがる理由もそこにある。

「そんなことはアスリートファーストではない。五輪の商業主義の最大の弊害だ」。IOCやIFに対するそんな非難が聞こえてきそうだ。だが、IFに入る資金は役員たちが私腹を肥やすために(一部はそうかもしれないが)使われるわけではない。競技を世界に幅広く普及、発展させるための財源でもある。

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