北越紀州製紙、植物由来新素材CNCに挑む

2016/11/22 6:30
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北越紀州製紙が木材由来の新素材開発に「二刀流」で乗り出した。カナダ西部のアルバータ州と組み、結晶体「セルロースナノクリスタル(CNC)」の研究や生産に本格的に取り組むと表明した。従来の「セルロースナノファイバー(CNF)」に加えてCNCの研究も深めることで、需要の減少が続く洋紙が中心の事業構造からの転換を急ぐ。

セルロースナノクリスタルは木材繊維を結晶体にした

セルロースナノクリスタルは木材繊維を結晶体にした

都内のカナダ大使館で18日、企業の研究者ら100人弱が集ったセミナーが開かれた。前日発表の北越紀州とアルバータ州とのCNC提携の内容が披露され、同州のデロン・ビラス経済開発・貿易大臣は「北越紀州とともにCNCの未来を切り開く」と述べた。

CNCは木材を細かく砕いた繊維物質に水素を結合させ、硫酸で処理することで結晶体(クリスタル)にする。鋼鉄の5分の1の軽さで強度は5倍というCNFと同等の性能を持つとされるが、CNFよりも長さが10分の1以下と短く、スパゲティ(CNF)と米粒(CNC)に例えられる。

乾燥状態で供給しやすく、化学薬品や塗料などに混ぜやすい。ゲル状で化粧品や食品などの増粘剤となるCNFとは別の用途が期待できる。

最大の特徴は製造コストの安さだ。1キログラムあたり5千~1万円とされるCNFに対し、CNCは10分の1とされる。日本で製紙各社はCNFの研究に注力するが、産業技術総合研究所の平田悟史上席イノベーションコーディネーターは「国際的にCNCの研究の方が活発になる」と指摘する。

北越紀州も既にCNFの研究は進めていた。クリーンルームの空気清浄に使うエアフィルターや「エアロゲル」と呼ぶスポンジ状の新素材を開発中だが、量産設備の稼働まで決めた王子ホールディングス(HD)や日本製紙などに比べると遅れていた。

そこで日本企業としてCNCの研究にいち早く取り組むことにした。役立ったのがカナダとの深い関係だ。北越紀州は2015年、アルバータ州にあるパルプ製造会社のアルパックを買収した。同州はカナダ国内でも特にCNCの研究が盛んで、月産400キロの試験プラントが既に稼働している。アルパックも以前からCNCを研究しており、その縁から今回の提携につながった。

北越紀州の岸本晢夫社長は「今後も積極的に協力関係を深めていきたい」と意気込む。アルパックでは17年にもCNCの試験プラントを設置し、20年までに商業生産することも検討している。

北越紀州は大型マシンによる高効率な洋紙の生産を強みとする。だが、国内で紙の消費量が減少すると、需要が堅調な家庭紙事業を持つ大王製紙などに比べても影響は大きい。そこで海外M&A(合併・買収)を通じた事業の多角化に取り組んできた。

17年3月期はアルパックの業績が通期で連結されて、洋紙事業が落ち込む中でも増収増益を確保する見通しだ。ただパルプ事業は市況に左右されるため、安定した収益源とはなりにくい。今回のアルバータ州とのCNCでの提携を将来にわたる海外ビジネスの柱として育てる狙いがある。

国内ではまだ知名度の少ない新素材、CNCを他社に先駆けて実用にこぎつけられるか。グローバル展開での生き残りを目指す北越紀州の将来を占う大事な一手となる。

(企業報道部 古川慶一)

[日経産業新聞11月22日付]

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