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AIで二極化も スポーツジャーナリズムの未来
スポーツライター 丹羽政善

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2016/11/22 6:30
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もはや、スポーツの現場に行かなくても、原稿ができあがるような時代になって久しい。しかもそれがビジネスとして成立する。

例えば、ある試合を現場で取材した記者の記事が、インターネットに掲載されたとする。後はそれを要約するなり翻訳するなりして、"紹介する"という体裁でネット上に掲載すれば、ページビュー(PV)に応じて広告収入が得られる。取材経費がゼロなのだから、抜群の生産性である。

もちろん、そうしたビジネスのあり方には批判もある。本来、出典を示して引用することに問題はない。むしろ、必要な補完作業だ。ただそれは"主従"でいえば、あくまでも従であるべきだ。ところが、その主従関係が逆転し、たんに要約したようなものが出回るようになって、モラルもなにもなくなった。

まったく現場に行かない記者の台頭

ここ数年、米スポーツメディア大手はそんな記事流用が氾濫するようになって監視の目を強めてきた。だが、同時にそうした現場に足を運ばず、独自の見方、考えを持たない"コピー&ペースト"ライターは、遅かれ早かれ淘汰されるとも見ている。別の意味で、まったく現場に行かない記者の台頭が著しいからだ。

今年の6月終わり、世界でも屈指の規模を誇る米AP通信が、マイナーリーグのリキャップ(試合の要約)を「オートメーテッド・インサイツ」社が開発した自動記事作成システムを使って、各メディアに配信すると発表した。ついにスポーツジャーナリズムに本格的な人工知能(AI)の参入である。

同社はマイナーリーグの公式ページで使われている「GAME DAY」という速報データを利用して記事を作成。これまでそうした原稿は品質の面で実際の記者が書く記事には及ばないと考えられていたが、実際に配信された文章を読むと、違和感がない。例えば、「打球がギリギリで外野フェンスを越えていった」「フルカウントからの際どい球をボールと判定されて投手が冷静さを失った」といった状況の描写はなく、単にそれらは本塁打、四球として処理される。だが誰々が先発した、どちらのチームが何対何で勝った、誰が勝ち投手になったという、最低限の情報は漏れなく入っており、結果と簡単な経過だけを知りたいなら十分だ。

今はマイナーリーグだけだが、そうしたシステムが大リーグや他のメジャースポーツでも利用され、試合終了と同時に公式ページなどに掲載されたとしよう。するとテレビやインターネットなどで試合を見て、どこよりも早く速報をネットに掲載してPVを稼ぐメディアなどは、AIのスピードには到底勝てまい。

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