イチロー フィールド

フォローする

イチローには「特別なもの」 米野球殿堂という存在
スポーツライター 丹羽政善

(1/2ページ)
2016/11/14 6:30
保存
共有
印刷
その他

ベーブ・ルースのレプリカバットを借りたことがある。バットメーカーの「ローリングス」が昔の資料をたどって復元したものだ。

2006年のキャンプ中、グラウンドでの練習を終えた松井秀喜さん(当時ヤンキース)にそのバットを手渡すと、いきなりぶんぶん振り始め、こうつぶやいた。

「重い」

ルースは一番重いもので54オンス(約1.53キロ)を使ったとされるが、晩年は37~39オンスだったとのこと。借りたのは40オンス(約1.13キロ)だったが、松井さんは当時、900グラム前後のバットを使っていたと記憶する。約200グラムの違いをその手で感じていた。

ただあのとき、松井さんのしぐさでなにより覚えているのは、喜々としてバットを握り、スイングを始めたことと、正面で構えたときに向けたバットへの視線。

現在と過去が、1本のバットを通してつながったように映った。

話変わって――。

01年、イチローが新人賞を獲得。電話による受賞会見が行われたときに誰かが、聞いた。

「今は日本にいるのですか?」

「いや、米国です」とイチロー。

「米国のどこですか?」との問いにも、「米国です」とはぐらかし、決して居場所を口にしなかったイチローだが、実際は、ニューヨーク州クーパーズタウンにある米野球殿堂のオフィスにいたそう。

8月7日にメジャー通算3千安打を達成し、野球殿堂にユニホームなどを寄贈した=共同

8月7日にメジャー通算3千安打を達成し、野球殿堂にユニホームなどを寄贈した=共同

そこでイチローは何かを探していた――。

リクエストに応え25点以上寄贈

そのことには後で触れるとして、以来、両者の関係は、実に長きにわたって続くことになる。

今年8月7日、イチローは、大リーグ通算3000安打を達成すると、翌日午後、マーリンズ・パークで野球殿堂のジェフ・アイドルソン館長と並んで会見し、記録達成時のユニホーム、スパイク、リストバンドなどを館長に手渡した。それまでも節目を迎えるたび、リクエストに応えて様々なグッズを野球殿堂に寄贈しており、アイドルソン館長によるとその数は25点以上だそうだが、惜しげもなく手放す背景には、過去にこんなことがあったからだとイチローは振り返る。

「米国に来て1年目ですから01年ですね、あのとき確か、どの記録でしたかね、ジョー・ジャクソン(シューレス・ジャクソン)の記録のときにそういう依頼があったと記憶しています」

イチローはあの年、ジョー・ジャクソンが1911年に記録した233安打の新人最多安打記録を更新。すると野球殿堂から、身につけていた道具の提供を求められた。ところがそのとき、「お断りをした」とイチロー。こんな思いがよぎった。

「そのときまだ米国でどれくらい自分がそういった記録に関われるのか、わからなかった状態だったので、そんな1回しかないかもしれないこの機会を将来の自分のために持っておきたいという気持ちがあったんでしょうね、道具にちょっと執着が生まれた」

今後、二度と大リーグの記録を破れないかもしれない。だとしたら、ジャクソンを超えたときのバット、スパイクなどは一生の記念になる――。

とはいえその後、そういう機会が次々に訪れた。04年にはシーズン最多安打記録を更新。06年には第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝し、08年には日米通算3000安打を記録。そのたびにヘルメットやスパイクを託した。

  • 1
  • 2
  • 次へ

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

大リーグコラム

電子版トップスポーツトップ

イチロー フィールド 一覧

フォローする
「自分ができないと思ってしまったら、それは絶対にできない」というイチロー=共同共同

 「しょうがない。そういう時代だよね。病気ができたら、それを治す薬がその後しか出てこない。そういう時期なんだね」
 2017年7月25日のこと。テキサスへ遠征中だったイチローに、スイングスピードが前年に …続き (3/24)

引退記者会見で話すマリナーズのイチロー(東京都内のホテル)=共同共同

 2019年3月21日、午後11時55分から始まり、日をまたいで、午前1時20分頃まで続いた引退記者会見。テレビで生中継もされたので、深夜とはいえ多くの人が見たようだが、おそらく、ああいった形でイチロ …続き (2019/11/25)

イチローウイークエンドで配られたイチロー人形

 9月14日午後5時49分、ホームの白いユニホームをまとったイチローが一塁側のダグアウトから姿を見せると、球場全体が大きな歓声に包まれた。
 2分後、ダグアウトに控えていたチームメイトらが全員出てきて、 …続き (2019/9/16)

ハイライト・スポーツ

[PR]