AIで失業 ベーシックインカムは正しい解決策か

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2016/11/11 6:20
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ネズミを使った過去の実験では、自分の存在意義がほとんどなくなると、集団は全滅するケースが多いことが示されてきた。人間の場合にはどうなるのだろうか。

最も貧しい家庭でさえ奴隷を使っていた古代ギリシャでは、自由な市民は創造的であることに専念したため、芸術や科学といった文化が繁栄した。一方、今の私たちのシナリオでは、AIアシスタントが基本的なニーズを担えば、AIのペットに陥ってしまうのだろうか。それとも再び創造的になるのだろうか。アルトマン氏が進めているオークランドでの実験は、この問いに答えてくれるかもしれない。

全ての国民が基本的なモノやサービスを賄える収入を受け取ると保証することは、政府が全員の食べ物や寝る場所を確保するということになる。UBIに対する最大の批判は、ベーシックインカムが保障されれば、国民は働く意欲を失うという点だ。その結果、われわれはAIアシスタントのペットになってしまうと反対派は懸念する。

■ベーシックインカムが導入されても、働きたい欲求はなくならない

人間が働く唯一の動機がお金なら、これはもっともな批判だろう。だが「マズローの欲求段階説」に関連するシナリオに目を向けると、人間には5段階の欲求があり、その全てが動機になることが理解できる。UBIは最も基本的な「生理的欲求」しか満たさない。ピラミッドの上位の欲求(安全、所属、承認、自己実現)により、人間はそれでも働きたいと思う。

これは単なる筆者のでっちあげではなく、証拠がある。1982年以降、UBIの概念に極めて近い政策を実施してきたアラスカ州について考えてみよう。「アラスカ永久基金」は多様な資産に投資し、収益を州民に分配している。この政策の導入以降、アラスカ州では1万人以上の雇用が創出された。しかも、この配当のせいで州民が前よりも仕事を減らしたという形跡はみじんもない。

もう一つの例はナミビアでのUBIのテストプロジェクトだ。ベーシックインカムの支給が始まると、国民の行動に急激な変化が見られた。自分で事業を立ち上げたのに伴い就業率が上がり、一般的な貧困水準は18ポイント、犯罪率は36.5ポイントそれぞれ下がったのだ。一般的な所得水準も29%増えた(この増加幅にはベーシックインカムは含まれていない)。アラスカと同様にナミビアでも、ベーシックインカムの支給で社会の健全性は改善したと報告された。

14年3月には、個人のグループを対象にしたある心理学の実験が行われた。実験の参加者には2つか3つのパズルを解く選択肢が与えられた。一部の参加者には、この活動に一切参加しないという選択肢もあった。その結果、参加しない選択肢も与えられた参加者は自分が選んだパズルにそれぞれ約7分を費やしたのに対し、他方の参加者がかけた時間は5分だった。つまり、働かないという選択肢を与えられると、人は本来、無為に過ごすよりも働く方を好むようだ。しかも、より熱心に関わるようになる。

では、ロボットに仕事を引き継ぎ、政府からUBIを支給されれば、われわれは怠惰で非創造的になるのだろうか。

答えはノーだ。

ベーシックインカムは全員に同じ水準が支給される。食べ物や寝る場所を気にする必要はないが、働くことを選んだ人はさらに収入を得られる。働かない人の収入は働く人よりも少ない。この状況は実は失業率の低下をもたらす可能性がある。人間は生理的欲求を超える欲求を満たすために働くからだ。

By Gary Fowler (スマート検索アシスタント「ファインド」の最高経営責任者で共同創業者)

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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