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次は札幌冬季五輪、立候補前に住民投票を

編集委員 北川和徳

2026年冬季五輪・パラリンピックの招致を目指し、札幌市が開催提案書を日本オリンピック委員会(JOC)に提出した。26年はともかく、30年大会まで視野に入れれば、札幌に2度目の冬季五輪がやってくる可能性はかなり高いと考えている。招致に成功すれば、日本では通算5度目(冬季は3度目)の五輪だ。20年に開催される東京五輪・パラリンピックの莫大な経費が批判にさらされる中で、札幌市民や国民はどう受け止めるのだろう。

欧米各都市にとっては「貧乏くじ」

五輪招致レースへの日本からの立候補はJOCが決定する。慎重な意見もあるようだが、五輪運動の普及、推進を使命とするJOCが、せっかく手を挙げた唯一の都市を撤退させるとは考えにくい。JOCの存在意義にも関わるからだ。開催経費の正確な試算などを求めた上で、結局は立候補を支持することになるのだろう。

では、招致成功の可能性はどのくらいあるのか。18年冬季は韓国の平昌、20年は東京、22年冬季は北京に決まっている。来年決定する24年大会は欧米の都市になるのが確実だが、これだけアジアでの五輪が続いていると、26年に札幌での五輪開催が国際オリンピック委員会(IOC)で認められるとは考えにくい。しかも、26年開催都市が決まるのは現行のルールでは東京大会の前年の19年のIOC総会。JOCなど日本のスポーツ関係者が招致活動に力を注ぐ余裕もなく、常識的には招致は難しい。

だが、ここに五輪に対する昨今の先進国都市の対応を考えると話は変わってくる。五輪は今や欧米の各都市にとっては「貧乏くじ」になりつつある。22年大会招致レースはオスロ、ストックホルムが途中で撤退、18年平昌、20年東京に続く大会でありながら、北京、アルマトイ(カザフスタン)のアジア対決となり、北京に決まった。有力候補になるはずだったミュンヘンが住民投票で立候補を断念したのが大きかった。

24年夏季大会の招致でもボストン、ハンブルクが立候補を断念。パリ、ブダペスト、ロサンゼルスが争っているものの、ローマも緊縮財政を掲げる市長の登場によって撤退した。

招致、莫大な経費負担で消極的に

各都市が五輪招致に消極的になる理由は、ほぼすべてが莫大な経費負担への反対だ。開催都市の規模が夏季に比べて小さく、スキー会場やソリ会場の整備が環境への大きな負荷となる冬季大会に関しては特に抵抗が大きい。26年大会はカナダや米国、スイスなどに立候補の動きがあるようだが、欧米では立候補前に住民投票による都市住民の意向確認が当たり前になってきた。最終的には26年に手を挙げたのは札幌だけという事態すらありえないわけではない。

札幌市の秋元克広市長は26年招致に失敗した場合も引き続き次を目指す姿勢を示している。30年も本気で招致するのなら、1972年に続く2度目の札幌大会が実現する可能性はかなり高いと考えられる。

欧米の都市が敬遠する「貧乏くじ」をあえて引こうとする札幌市の狙いは明確だ。青写真は典型的な都市開発型の五輪である。札幌市の開催概要計画検討委員会の原田宗彦委員長(早大スポーツ科学学術院教授)は「札幌は世界的なスノーリゾート観光都市になることができる」と話す。

国際的スノーリゾート都市の是非

アジアでは各国が経済的に成長して富裕層が急増しているが、欧州や北米のような洗練された国際的スノーリゾート地は登場していない。大きな可能性を秘めているのが札幌だ。アジアでは最初の冬の五輪開催地。2度目の五輪をきっかけに国際的な知名度をさらに高め、民間投資を呼び込んで近代的なスポーツ施設やホテルを再整備し、アジアの富裕層の誰もがあこがれるような世界的なスノーリゾート都市のブランド確立を目指すというわけだ。北海道全体の観光地としてのパワーアップも期待できる。

札幌市までの新幹線の延伸も30年度が予定されている。古典的な手法ではあるが、インバウンド(訪日外国人客)が急増中の日本で地方都市が発展を目指す戦略としては、的を射たアイデアと評価もできる。ただし、それを決めるのは政治家や建設業者ではない。

五輪とスポーツを取材してきた立場からすれば日本での五輪開催は歓迎したい。だが、経済成長やインバウンドの増加こそ明るい未来を描く必要条件とする考え方もあれば、人口減少を受け入れて物質的な豊かさよりも平穏で安全な生活を望むという選択肢だってある。ここは当然、欧米の都市のように、少なくとも札幌市民による住民投票の実施が立候補の是非を決める前提になるべきだと思う。

現在の札幌市の計画では開閉会式は札幌ドーム、スキー・アルペンはニセコ、スキー・ジャンプは大倉山、宮の森両ジャンプ台を使うなど、既存施設を最大限活用してコストを抑えるという。それでも開催経費は最大で4500億円程度と見込まれる。それで必ず収まるという保証もない。

議論通じ目指すべき未来の認識共有

札幌市は14年10月に五輪招致に関わる市民アンケート(対象は18歳以上男女1万人、郵送方式で回収率47.8%)を実施した。結果は冬季五輪招致に賛成33.7%、どちらかといえば賛成33%で、招致を支持する意見は計66.7%に達した。まずまずの数字ではあるが、これで市民の理解を得たとはとてもいえない。

住民投票となればお金もかかる。だが、投票を通じて市民全体で五輪招致の是非を議論すれば、都市や地域が目指すべき未来に向けての認識も共有される。その意味では首長選よりも重要だろう。それは20年東京大会を取り巻く現状からの教訓でもある。

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