2018年7月20日(金)

ピコ太郎 関連動画で潤う

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2016/11/9 6:30
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 コンテンツ産業で新潮流が起きている。データ通信速度の高速化やデジタル編集技術の急激な進歩で、コンテンツの発信と受信が誰でも手軽にできるようになった。個人レベルを含めて新規参入者による新しいビジネスモデルが台頭する一方、既存のメディアは変革を迫られる。

ピコ太郎さんの動画は、公開から2カ月強でユーチューブでの再生回数が8000万回を超えた

ピコ太郎さんの動画は、公開から2カ月強でユーチューブでの再生回数が8000万回を超えた

 「アーン、アッポーペン」――。ヒョウ柄衣装にパンチパーマの男が、珍妙な歌で踊る「PPAP」の世界的なフィーバーが止まらない。この1分8秒の動画が投稿サイト「ユーチューブ」で公開されたのは8月25日。わずか2カ月強で再生回数は8000万回を突破した。

 演者のピコ太郎さん自身がメガヒットに驚く。「スタジオを借りて10万円で作った動画が世界に広がっていくっていうのは、ネットってスゲー!」。10月28日の日本外国特派員協会の会見では、興奮を隠さなかった。

 ピコ太郎さんはエイベックス・グループ・ホールディングス傘下のレーベルに所属するタレントだ。動画には広告が表示されるため、そのフィーがエイベックス経由でピコ太郎さんの懐に入る。

 ユーチューブは広告単価を明らかにしていないが、オークション形式のため、再生回数が多く見込める動画の方が単価は高くなる。再生1回につき0.025~1円になっているもよう。これを基準にPPAPの現時点までのフィーを計算すると推定200万~8000万円となるが、実際はその数倍になっている可能性が高い。なぜか。

 インターネットで人気の作品で問題になるのが、演者や所属事務所がまったく関知していない非公式投稿だ。触発された者が、音楽や踊りをものまねしたり、オリジナルをデジタル編集で別物に改変したりした動画を、許可無く勝手に投稿する。著作権・著作隣接権者の対抗策は、これまでは投稿サイトへ削除を要請するか、泣き寝入りするしかなかった。

 その状況を変えたのが、ユーチューブが2007年10月に導入した「コンテンツID」だ。不正動画を効率的に見つけだし削除する仕組みとして開発されたが、オリジナルの権利者が「対抗策で稼ぐ」機能も備えていた。著作物侵害の作品に広告をつけて、その広告収入を正当な権利者が総取りする機能で、最近、その絶大な効果に気付いた音楽・映像関連企業が積極的に活用するようになっている。

 具体的な仕組みはこうだ。著作権者が動画や音楽といった著作物のデータをユーチューブのシステムに登録する。ユーチューブ側では、動画であれば1コマごとに指紋のようなものを自動作成する。ユーチューブに投稿された動画もすべて指紋をとって、システムに登録されたデータと照合する。一致した場合は、投稿した人が誰であろうとも、正当な権利者の著作物とみなす。

 著作物として認定した場合、動画を公開させない「ブロック」、公開するが記録する「トラック」、広告の収入を著作権者に帰属させる「マネタイズ」の3種類の手段を著作権者は選ぶことができる。マネタイズを選択すれば、再生の前に流れる広告の収入はものまね作品の投稿者ではなく、オリジナルの著作権者に入る。利益を第一に考えるなら、もはや非公式投稿は禁じるより推奨すべきものだ。

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