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[FT]決断の時、相場リスクと結果を評価する投資家

Financial Times

投資家にとって選挙が頭痛の種になる理由は分かりやすい。一つには、大胆な選挙公約は資産価格を大きく揺るがす。また、経済統計や中央銀行の決断とは異なり、結果を予想するのが恐ろしいほど難しくなりうる。ホワイトハウスの主の座をめぐる今年の激戦には、どちらも当てはまる。

米国債 トランプ氏ならボラティリティー注入

今回の選挙は、混乱期にお金を預けておく絶好の投資先としての米国債の評判を磨き上げるはずだ。国債利回りは今月、じりじり低下しており、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏が実際に勝った場合、予想しづらい「オーバルオフィス」(大統領執務室)の主を投資家が急速に織り込むにつれて、利回りが一段と低下する可能性を排除してはならない。

だが、たとえ「トランプ勝利」に対する投資家の瞬間的な反応が米国債(およびドイツ国債やその他の国債など)に駆け込むことだったとしても、ストラテジストらは、トランプ氏とヒラリー・クリントン氏のどちらがホワイトハウスを手に入れても13兆ドル規模の米国債市場には一定のリスクが生じると警鐘を鳴らす。

クリントン氏が勝てば、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げするという、すでに高い期待が固定され、国債利回りに上昇圧力がかかる。例えば三菱東京UFJ銀行のアナリストらは、トランプ氏の勝利はFRBの来月の引き締め政策に対する唯一最大の障害だと見ている。

トランプ氏が大統領になった場合の危険は、それとは異なる。トランプ氏はジャネット・イエレンFRB議長のことを政治的な役者として痛罵した。その後同議長が2期目を迎えると考える人はほとんどいない。モルガン・スタンレーのアナリストらに言わせると、それはFRBの予測可能な政策立案にすっかり慣れ切った債券市場にボラティリティー(変動)を注入する。さらに、もしトランプ氏が包括的な財政刺激策を可決させられたら、さらに多くの債務が市場に加わることになる。

米ドル クリントン氏なら急騰か トランプ氏なら対円で下落

トレーダーやストラテジストによると、2016年のさえない動きの後、クリントン氏の勝利はまさに、米ドルが年末にかけて力強いフィニッシュを仕掛けるために必要な材料になり得る。ゴールドマン・サックスのトレーダーなどは、貿易加重ベースの実効レートでドルが3%急騰する可能性もあると見ている。大統領選の不確実性が取り除かれ、FRBによる12月の利上げへの道が開かれるからだ。大半の資産クラスと同様に、トランプ氏がホワイトハウスを手に入れた場合のドル相場の展望は、クリントン氏が勝利した場合ほど明白ではない。もし投資家の瞬間的な反応がリスクから手を引くことだったとすれば、ドルはユーロや特に円などの主要通貨に対して下落する可能性がある。また、そのシナリオの下では、スイスフランの急騰と金相場の反騰も見込んでおいたほうがいいだろう。

トランプ氏の選挙運動を定義づける要因となった反自由貿易のレトリックを考えると、ドル安の流れが新興国通貨にも及ぶ可能性は低い。実際、証券会社TDセキュリティーズのストラテジストらは、選挙結果が消化されるにつれて、新興国通貨は5~7%下落する可能性があると話している。

メキシコペソ トランプ氏の命運と足並み

投資家は、声高に叫ぶべきことが多々あるという売買にしがみついてきた。トランプ氏にとって良いことは、メキシコペソにとって悪い、ということだ。

トランプ氏が米国とメキシコ、カナダの自由貿易圏を廃止すると誓っていることから、ペソの命運は同氏の命運と足並みをそろえるように上下してきた。

7日、米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メールサーバーの利用について訴追を求めない判断を再確認した後、ペソが2.2%跳ね上がり、1ドル=18.6ペソを付けたのが、最新の例だ。クリントン氏が実際にバラク・オバマ大統領の後を継ぐことになれば、ペソの対ドル相場は8日に17.3ペソに上昇する可能性があると野村証券は見ている。同社によると、選挙結果が反対に出たら、ペソ相場は1ドル=23ペソの史上最安値に落ち込む可能性があるという。この予想はウォール街の多くの人と共通するものだ。

米国株 株価指数変動予測、3%超の未踏記録

市場がクリントン氏の勝利をどう受け止めるかという感触を得たいのであれば、7日のS&P500種株価指数の急騰を見れば事足りる――少なくとも当初の反応については、そうだ。もしその反応が安堵だったとすれば、投資家の間には、クリントン大統領の下では株式市場のある分野がほかより健闘するという明確な確信がある。

クレディスイスによると、クリントン氏が医薬品の値上げについて出した警告を考えると、例えば医療・医薬品関連株は投資家から以前より用心深く扱われる見込みだ。もし民主党が米議会の支配権も取り戻し、新たな法律制定の可能性が高まれば、この警戒感は敵意に発展する可能性がある。ナスダック・バイオテクノロジー指数は今年23%下落しており、すでに米国株式市場全体の動きをアンダーパフォームしている。

トランプ氏はウォール街で働く多くの人と同調するように、米国株は過大評価されていると思うと話している。また、ウォール街の証券会社数社は、トランプ氏が勝った場合、株式は高利回り債を含むリスク資産の当初の下げにのみ込まれると考えている。

クレディスイスのマンディ・シュー氏が行ったS&P500のオプション取引の分析によると、誰が勝つにせよ、ウォール街の代表的な株価指数は当日3.3%変動すると予想される。

もしそうのような展開になれば、記録的な選挙後の変動となる。シュー氏いわく、選挙の翌日にS&P500が2%変動したのは過去58年間で2度しかないからだ。変動幅の平均はわずか1.1%にとどまっている。

By Richard Blackden

(2016年11月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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