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米大統領選、トランプ氏逆転はあるのか 当惑する市場

米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン前国務長官が公務に私用メールを使った問題について、米連邦捜査局(FBI)は再捜査を始めた。その後相次ぎ発表となった支持率調査が、市場の不安感を醸成している。

マーケットは、共和党候補の不動産王、ドナルド・トランプ氏が当選するリスクの再吟味を始めた。

最新の米ABCテレビの調査では、クリントン氏が46%、トランプ氏が45%と拮抗してきた。注目すべきは、先週を通じて支持率の差が縮小傾向をたどったことだ。

10月22日から28日までの7日間の推移をあげてみよう。クリントン氏の支持率は50%で始まり、翌23日に50%、以後49%、48%、48%、47%、46%と、ほぼ一貫して下げ続けている。一方、トランプ氏は38%で始まったが、その後は38%、40%、42%、44%、45%と上げ続け、28日は45%と横ばいを保った。

同じ調査によれば、私用メール問題を巡る新たなFBIの捜査によって投票者の3分の1ほどが「クリントン氏を支持しないかもしれない」と答えた。一方、63%は考慮するのはメール問題だけではない、という判断に立ち「投票行動には関係なし」との立場だ。

今後の注目は、今回の一件がどの程度、トランプ支持者を実際の投票行動にかき立てるのか、という点だ。そして、一部のクリントン支持者が萎えて無投票を選択する可能性が指摘されている。特に浮動票への影響は避けられまい。

既に期日前投票を済ませた多くの人たちからは「今さらそう言われても」「それを知っていれば」など、たらればの声が聞こえてくる。

FBIがなぜこの時期に発表したのか、という点についても非難があがっている。FBIのコミー長官としては今年7月、米議会に「一件落着」と報告しており、再捜査を開始するからにはその旨を発表する義務がある、と判断したようだ。それにしても大統領選の投票日直前のタイミングでの「爆弾発表」は様々な臆測を呼ぶ。

基本的にクリントン氏がリードする情勢は変わらない。しかしトランプ氏当選も、確率は極めて低いが、起きれば影響が甚大という「テールリスク」として単に割り切ることができない。金融市場ではクリントン氏勝利シナリオをベースに運用計画を構築し始めたところだが、その前提が大きく揺らぎ始めたのは間違いない。いったん、織り込みが進んだだけに、サプライズ性が高いのだ。作成したアナリストリポートの書き直しを迫られた、と嘆くアナリストも少なくない。

今日から始まった日銀金融政策決定会合は追加緩和見送り、今週開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げなし、とおおよその察しがつく。しかし突発的に浮上したクリントン氏を巡る新しいメール問題は、今日以降、新たに様々な情報が流され、市場もそのたびに振られることになりそうだ。

特に外国為替市場では、円安・ドル高進行が1ドル=105円台に到達したところで新たな円高要因に見舞われた。ドル高の流れに乗った投機筋による利益確定のドル売りが出やすい地合いになっている。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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