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イチローがようやく乗り越えた悲しい性
スポーツライター 丹羽政善

(1/2ページ)
2016/10/31 6:30
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 変えないために、変えていかなければならないことがある。

 こうあるべきだ。この考え方だけは譲れない。

 ところが、環境や置かれた状況の変化に伴い、ある価値観を守るためには、同等に大切だった別の信念を捨ててでも、ときに柔軟になる必要がある。やがて考え方の軸となるのは、そうしてそぎ落とされてきたもの。

8月にメジャー通算3000安打を達成した日の試合後、「感情を殺すことを続けてきた」と語った=共同

8月にメジャー通算3000安打を達成した日の試合後、「感情を殺すことを続けてきた」と語った=共同

 では、日本のプロ野球から大リーグへ。大リーグでは、不動の「1番・ライト」から4番目の外野手へと、様々な環境が変化するなかで、今年6月に日米通算ながらピート・ローズが持つ大リーグの最多安打記録を更新し、8月には大リーグ通算3000安打を放ったイチローは、なにをよりどころとして来たのか。

 3000安打を打った日の試合後、「あるときから(軸としたのは)感情を殺すことですね」と明かし、続けた。

 「このことは、ずっと続けて来たつもりです」

 アスリートが最高の力を発揮するためには、感情をコントロールすることが必要などといわれる。ところがイチローの場合、それとは微妙にニュアンスが異なる。

 「ヒットをがむしゃらに打とうとすることが、いけないことなんじゃないかっていう。僕は混乱した時期があった」

チームメートが襲撃?トラウマに

 自分のすべきことに集中し、ヒットを打ち、やがてそれが一つの記録として結実。ところが、それを喜ぶと“イチローは自分のことしか考えていない”“イチローはチームの勝ちより自分の記録の方が大切”などと陰でささやかれた。自分自身のパフォーマンスのためというより、イチローはチームメートの目に自分がどう映るかを気にし、身を守る術として、感情を殺すようになった。

 では、“あるとき”とはいつなのか。

 浮かんだのが、2008年のシーズン終盤、地元紙「シアトル・タイムズ」の、イチローに対するチームメートのゆがんだ感情を暴露した記事のこと。ある選手の証言を元に、イチローを自分勝手なやつととらえ、嫌っているチームメートが多いこと、シーズンが始まって間もないころ、その一部が、イチローを襲うと息巻いていたことなどが、明かされた。

すべきことに集中してきた。それを喜ぶと「チームの勝ちより自分の記録が大切」とささやかれたことも=共同

すべきことに集中してきた。それを喜ぶと「チームの勝ちより自分の記録が大切」とささやかれたことも=共同

 襲撃うんぬんの信ぴょう性は分からないが、嫉妬に端を発し、イチローを否定するようなとらえ方があったのは事実。過去、本人も認めている。

 以前も紹介したが、10年9月にイチローが日米通算3500安打に到達したとき、本拠地での試合にもかかわらず、電光掲示板に記録が紹介されることはなかった。依頼したのはイチロー本人。試合後にこう理由を明かしている。

 「2年前のことを勉強してますから、僕も。いろいろあったじゃないですか。そういうリスクを僕としては、今回、また負うわけにはいかない。そうやって勉強するのが人間ですから、しょうがないよね。本当はそうしたくないけど」

 このときのことはまったく杞憂(きゆう)に終わるのだが、08年に受けた理不尽は長くトラウマとなり、イチローは感情を表に出すことを躊躇(ちゅうちょ)するようになった。

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