新Eメール発覚、市場の景色一変 - 日本経済新聞
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新Eメール発覚、市場の景色一変

28日米ニューヨーク(NY)時間の午後、米連邦捜査局(FBI)長官の突然の記者会見で、市場の景色が一変した。

大統領選11日前の時点で、ヒラリー・クリントン氏の新たなEメール発覚。中身はこれから精査する。捜査には時間がかかる、との発表は、全く想定外だった。株は急落、円は急騰。おそらく、捜査中のまま、本選に突入することになりそうだ。

態度を決めかねている未決定層への衝撃も想像に難くない。トランプ氏の非常識発言にはうんざり。しかし、クリントン氏も感じ悪い、と迷っていた。そこに今回のFBI発表は、クリントン氏への不信感を強める可能性が強い。

それにしても、なぜ、このタイミングで、FBIは発表に踏み切ったのか。

7月に、FBI長官は、クリントン氏の私用Eメール問題捜査を打ち切り、トランプ氏はFBIを批判。大統領選挙が「操作」されていると非難してきた。そこで、FBIとしても、疑わしきは、発表して捜査再開することで、降りかかる火の粉を振り払ったとも考えられる。

トランプ氏は、即、反応。壇上では、つとめて「大統領らしく」振る舞い、まくしたてることは避け、クリントン陣営を非難。注目されたのは、正統派の共和党リーダー格、ポール・ライアン氏も、強い表現でクリントン氏を攻撃したことだ。

皮肉なことに、両陣営とも珍しく足並みをそろえ、FBIに事の全容を開示せよ、と迫っている。

市場は、あまりに突然の情勢の急変についていけてない。当惑している。クリントンの勝利を織り込み済みとしてきたディーラーは狼狽(ろうばい)している。

来週も、新Eメールの全貌が不明のまま、きわめて不透明な状況に置かれることになりそうだ。

結局、大統領選の結果は蓋を開けてみないと分からない、ということになる可能性が強まる。

外為市場では105円台に乗せた途端に、唐突な円買い要因が、相場の頭をたたく展開になった。

31日~11月1日の日銀政策決定会合までに、万が一、トランプ氏有利の新情報でも飛び出すと、海外要因として無視できまい。まずは、週末に、新たな展開があるか否か。市場は固唾をのんで注視している。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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