2019年4月26日(金)

大まかでも速ければOK 右脳型AIに注目

2016/10/26 6:30
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人工知能(AI)の開発で、「大ざっぱ」や「いいかげんさ」を持たせる研究に注目が集まっている。人間は人混みから知人を見分けるのに一人ひとりの顔を見比べるわけではない。それらしい人を適当に探すいいかげんさが特徴だ。AIでも大まかなデータ処理で素早く計算できるようになれば、大型のコンピューターがいらなくなる。あらゆるものがネットにつながる「IoT」で強みを発揮できると期待する。

日本IBM・東大のAIはボールの違いを見分け、「On」「Off」の印を付けた

日本IBM・東大のAIはボールの違いを見分け、「On」「Off」の印を付けた

「大まかでいいんです」と笑って話すのは日本IBM東京基礎研究所の中川茂部長だ。日本IBMと東京大学が開発中のAIは、ほとんどコンピューター内で計算をしない。ときには間違って答える。正答を追い求めるこれまでのAIとは発想が違う。防犯カメラや電化製品への応用を考えているという。

16~21日に京都大学で開いた神経情報処理国際会議で、ユニークな実験を公開した。ボールが跳びはねる映像をAIに示すと、わずかにはね方の違う2種類のボールを次々に見分けていく。

一般のAIでは、ボールの動きの違いを探すのに大量の計算が要る。応用が進む深層学習(ディープラーニング)の技術も同じだ。大型のコンピューターや膨大なデータをやり取りする通信網が欠かせず、身近で使うIoTには不利だ。

新しいAIは、ソフトによる膨大な計算の代わりに、データの違いに素早く気づくのが特徴だ。

それぞれのデータをわずかに乱すことで、似通った部分の中に埋もれたわずかな違いをあぶり出す。将来は特殊な装置を使ってわざと波形の汚いレーザー光で信号を乱す。はじめは似通っていた信号が乱れていくうちに自然と別々のグループに分かれる現象に目をつけた。

特定の画像を認識する場合、目的の画像とそれ以外を大まかに区別できれば、その後の計算は楽になる。正答率は9割程度で間違いもあるが、計算量を最小限に抑えながら分類ができ、消費電力も劇的に減る。

従来のコンピューターはそろったデータを大量に計算して厳密な答えを出す「左脳型」。そこに「大まかでも、目の前の状況を判断できる右脳の機能をコンピューターに足す」(中川氏)のが目標だ。

間違いはあるが手軽なAIは、IoTの場面で真価を発揮する。

街中の監視カメラの映像で動いたものを逐一中央のサーバーで解析すると、計算量は膨大になる。個々のカメラで動きを「人」「イヌ」などと大ざっぱに分けてから「人」だけをサーバーで詳しく解析すれば不審な人物を絞り込みやすい。

高精度な処理へこだわらない試みは国内外で増えている。

NECと大阪大学は4月から「脳型認知マシン」と呼ぶAI技術の開発を始めた。脳が映像や音の情報をパターンに変えて処理する仕組みをまねる。

米マサチューセッツ工科大学も9月、企業と共同で視覚や聴覚をまねた情報認識技術を目指す共同研究を開始した。

「大ざっぱなAI」の研究は始まったばかりだが、国内外の関心は高い。

NEC中央研究所の加納敏行主席技術主幹は「開発競争が激化する可能性がある」と話す一方、「世界でもトップレベルの日本の脳科学を生かせば、日本が研究をリードできるはず」と話す。

(大阪経済部 出村政彬)

[日経産業新聞10月26日付]

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