2019年5月24日(金)

タイ、広がる消費自粛 国王死去1週間

2016/10/21 6:30
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タイのプミポン国王の死去から20日で1週間がたった。自動車産業を中心に「アジアの工場」タイのサプライチェーン(供給網)に目立った混乱はなく、産業界は安堵している。一方で、自粛ムードが広がり、消費や娯楽に影響が出ている。タイ政府は1カ月間の娯楽自粛を通達しており、影響が長引けば停滞する経済のさらなる逆風になりかねない。

独メルセデス・ベンツの販売店は入り口付近にプミポン国王の写真と祭壇を設置した。店内に客の姿は無かった(20日、バンコク)

独メルセデス・ベンツの販売店は入り口付近にプミポン国王の写真と祭壇を設置した。店内に客の姿は無かった(20日、バンコク)

タイ販売シェア首位のトヨタ自動車は、国王死去の翌日14日も国内全3工場を通常稼働した。中小企業のなかには数日間操業を停止する工場もあったが、トヨタは20日時点で「部品の供給体制に支障は出ていない」としている。日立製作所なども同様で、懸念されたサプライチェーンの寸断は回避された。

金融取引にも大きな混乱はない。代表的な株価指数であるタイ総合指数は、国王の容体不安発表前の7日終値に比べ、20日は1%安の1492.73で引けた。12日に一時11%安まで下げたが値を戻した。

国王の死去後、追悼の意を表す黒い服や関連製品は品薄状態が続く。衣料品の地場企業は、黒いズボンの生産を倍増させるほか、政府は約800万人に黒いTシャツを無料で配る。国王の肖像画も売り切れが続出しているという。

一方、一般の消費や娯楽では自粛ムードが広がっている。首都郊外のホンダ販売店では来客数が3割減った。以前に予約した顧客からは「引き渡しを12月にしてほしい」という依頼が来た。実際の売り上げがたつのは先になる。営業担当者は「1カ月後には客足が戻ると思うが」と心配顔だ。東北部のトヨタ販売店も同様の状況だ。

タイ政府はテレビ局に対し、1カ月間は国王に関連する追悼番組やドラマ、ニュースのみを流すようにと通達した。商品宣伝などの広告は難しい。新聞への追悼広告掲載の動きは広がるが、大手広告メディア幹部は「この1カ月間は期待できない。2016年通年のタイ広告市場は、前年比2桁減もあり得る」という。

ホテル運営デュシット・インターナショナルは「結婚式の延期が相次ぐ」とする。タイサッカー協会は通常11月まで続く国内リーグを中止した。

観光産業にも影響が出ている。一部ホテルでは外国人の宿泊キャンセルが出た。国王の死去後、国内主要5空港の一日あたり外国人利用者数は9月に比べ1割減った。

タイ軍事政権のプラユット暫定首相は、新国王が月内にも即位する見通しを示した。プミポン国王の長男のワチラロンコン皇太子(64)が王位を継ぐ。タイでは14年のクーデターで旧憲法が廃止され、総選挙を経た民政復帰には新憲法施行が欠かせない。

プラユット氏は新憲法を「民政復帰のロードマップ(行程表)に影響しないように新国王が署名する」とした。17年末の総選挙を経た民政復帰の予定に変更がないと改めて強調している。

タイは国内消費や民間投資の減退で14年の経済成長率が0.8%まで落ち込んだ。インフラ整備など政府投資拡大で16年予想は3.3~3.5%まで回復する見込みだ。消費減退は回り回って製造業の生産調整などにつながりかねない。タイ経済の先行きには再び不透明感が漂い始めている。

(バンコク支局 京塚環)

[日経産業新聞 10月21日付]

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