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自ら辺境作って革新 コニカミノルタ取締役会議長

CTO30会議(5)

日経BPクリーンテック研究所

コニカミノルタは、1873年創業のコニカ(当時、小西屋六兵衛店)と1928年創業のミノルタ(当時、日独写真機商店)が2003年に合併して誕生した。売り上げの8割以上が海外市場、約4万3000人の従業員の7割が外国籍というグローバル企業だ。成長を続けるために異なる考え方を受け入れる社風を醸成し、「イノベーションは辺境から起こる」との考えから「Business Innovation Center(BIC)」を世界5拠点で設立した。BIC設立時に社長だった同社の松崎正年 取締役会議長に、イノベーションを継続して創出するための活動について聞いた。

――CTO(最高技術責任者)の役割について教えてください。

コニカミノルタの松崎正年 取締役会議長(撮影:新関雅士)

松崎会社のトップであるCEO(最高経営責任者)の意図を理解して、経営者視点で技術をマネージメントすることです。国内外の研究開発部門のリーダーを誰にするかといった人事、開発のための環境づくり、技術戦略の構築など技術に関することはすべて担当します。

イノベーションが継続して起こるようにする仕組みを作り、運用することもCTOの役割です。運任せや人任せではいけません。イノベーションを生み出す仕組みを社内に持っていることが大事です。可能性のあるアイデアをいくつか常に出せるようにしておいて、事業の浮き沈みの中で必要なときに新しいアイデアを使って、社内の仕組みでイノベーションを生み出していきます。こうした活動を管理するのがCTOです。

また、企業価値を上げるために技術広報の役割も担います。IRのために開く説明会などでも研究・開発(R&D)に関わることは、CTOが説明します。

――「CEOの意図を理解して」と言われましたが、松崎さんは社長のときに、どのような意図をもって経営されていましたか。

松崎 リーマンショックの直後でビジネス環境が厳しい状況でしたので、持続的に成長する会社にすることをビジョンとして掲げました。成長を続けるためには、常に進化しなければいけません。もう一つ、世の中に支持される会社になることもビジョンに挙げました。

――具体的に、どのような点での進化が必要でしたか。

松崎 あらゆる点で進化が必要でした。仕事の仕方も、顧客に与える価値も、グローバル経営も、全部です。

グローバル経営の進化とは、会社全体の最適化の追求です。かつては日本、米国、欧州など、それぞれが別々に活動していて、単純にそれらを足し合わせてコニカミノルタは成り立っていました。そこから、足し算以上の成果を出すための進化を求めて動き始めました。例えば、人材の活用です。日本の企業だからリーダーは日本人といった決め方はしません。コニカミノルタ全体を見渡して、最適な人選をします。ある分野のマーケティングに強い人がドイツにいれば、その人をその分野のマーケティングのリーダーに登用します。資金の有効活用についても、会社全体で最適な方法を選びます。そして社員の行動についても、コニカミノルタ全体の価値を上げるようにと、全社員に進化を求めています。

――コニカミノルタが掲げているジャンルトップ戦略について教えてください。

松崎 複合機業界にはビッグ3がいます。3社とも優良企業です。社長に就任したとき、ある記者から、その3社とどう戦うのか戦略について聞かれました。「規模で張り合うつもりはないし、同じことを小規模にやるつもりもない」。これがそのときの答えです。

ジャンルトップ戦略を語る松崎取締役会議長(撮影:新関雅士)

大手と同じことをやるのではなく、分野(ジャンル)を絞って、そこだけはトップを目指そうと考えました。これが「ジャンルトップ戦略」です。例えば複合機であれば、自社の強みが発揮できるA3ベースのカラーに絞ってトップを狙うなどです。カラーのプロダクションプリントもそうです。新製品を出すと、その売れ行きを見て次の製品の開発に生かすのが普通です。ビッグ3もそうしました。

でもジャンルトップ戦略を取っている私たちは、プロダクションプリントの新製品を矢継ぎ早に出しました。売り上げが十分に大きくなる前に次々に製品を出すのですから、当初は赤字になりました。ただ、スピード感を持って実施したおかげで、計画通りにブレークイーブンにし、翌年には黒字化できました。

すべてをやろうとすると、どうしてもビッグ3の次になってしまって事業が縮小してしまいます。第2グループでいいとなると、改善しようという意識が薄れます。ところがある分野でトップを狙うと、その分野だけは突出しなければいけない。トップを目指すということで社員のモチベーションも上がり、より良いものを作ろうという意識が芽生えます。社員の意識改革につながるのです。実は狙いはそこにありました。

――BICを設立された意図は何でしょうか。

松崎 改革を起こそうとするとき、それをこれまでの担当者に任せたのでは実現できることに限界があります。専門外の人の方がやりやすい。ソニー創業者の井深大さんが「変革は辺境から」という言葉を残しています。当社もそれに倣いました。自らBICという辺境を作り、外からゲームチェンジャーになれる有識者を招き入れました。

コニカミノルタのビジネスはIoT(モノのインターネット化)で価値が生まれます。モノからサービスへのシフトと言ってもいい。今までモノづくりをしていた人にいきなりサービスを考えろといってもなかなか難しい。外の人にモノを見せれば、IoTでどう変えるか、新しい発想を見せてくれます。他の社員にいい刺激を与えることになります。

――コニカミノルタのイノベーション創出のための行動スローガンの中に「Inclusive(包括的な)」とあります。これを入れたのはなぜですか。

松崎 日本人は、チームプレーはとても得意です。しかし仲間になっていないと、連携するのが下手になります。海外の売り上げが多い中、日本の社員はBICのメンバーとも海外拠点のメンバーとも上手く連携しなければいけません。大学などともいい関係を築く必要がある。そこでInclusiveの考えが必要だと感じています。大切なのは異文化を受け入れることです。流儀が違うのは当たり前。どう折り合いをつけるか考えてほしい。そういう思いでInclusiveを行動スローガンに入れました。

1990年代に米国企業と協業したことがあります。会議の後、先方のマネージャーがいそいそと出かけていくので、どこへ行くのかを聞いたら、気まずそうに「日本企業と付き合う方法」というセミナーを聴講しに行くと言いました。米国企業にとって日本企業は発想の違う異質なものだったのです。だからこそ上手く付き合う努力をしてくれていたのだと思います。日本企業もグローバル企業になるなら、そのための努力をするべきです。

――こうしたイノベーションを起こす仕組みを作り、運営するCTOに求められる資質はどのようなものでしょうか。

松崎 技術のバックグラウンドを持っていること。一つの分野を深く突き詰めた経験がなければ、技術の良しあしを判断することはできません。発想の異なる人、文化の違う人と折り合いをつける能力も必要です。コニカミノルタでは、グローバルにその能力が求められています。

――最後に、日本の研究者へメッセージがあればお願いします。

松崎 「ビジョンを持て」と言いたい。ハードワークだけでは成果は出ません。やはりビジョンがあって初めて成果が出せるのです。実現を想定した具体的なビジョンを持つのです。研究者の一人ひとりがビジョンを持って行動すれば、日々の仕事の意味を深く考えるようになり、それが成果につながっていくのです。

(聞き手=日経BPクリーンテック研究所 菊池珠夫)

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