センサー、ドローンで精密管理 IoTで「農業革命」

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2016/10/21 6:30
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ITpro

農業の競争力強化が叫ばれているなかで、ICT(情報通信技術)への期待が高まっている。金融とテクノロジーの融合を「FinTech(フィンテック)」と呼ぶように、農業とテクノロジーの融合を「AgTech(アグテック)」と呼ぶことがある。2017年はAgTechへの取組みが進む。

とりわけ、センサーを駆使することから、農業のIoT(モノのインターネット化)適用とみることもできる。センサーやドローン、クラウド、モバイルデバイスを動員し、農業を変えていこうというわけだ。

■ドローンで「精密農業」が可能に

コンピューター制御によって自律飛行するドローン(無人航空機)は、様々な分野で利用が始まっており、「農業ドローン」はその一つである。農薬散布とリモートセンシングに期待が集まっている。ドローンの農業への適用は緒に就いたばかりだが、2017年には具体例が続々と出てきそうだ。

ドローンによる農薬散布の運行基準「マルチローター式小型無人機による農薬散布のための安全対策に関する運行基準(暫定)」が2016年3月に定まり、ドローンメーカーが参入できる土壌が整ったことが大きい。これを受け、エンルートや中国DJIなどドローンメーカーの参入が相次いでいる。

ドローンは小回りが利くため、狭小農地でも使えるし、事前に空撮して生育状況を観察した上で、まくべきところにまける。小型低価格のタイプであれば、各農家が機体を保有できる。農薬散布向け無人航空機の分野では長らく、産業用無人ヘリコプターが使われてきたが、地上の操縦者や補助者と無人ヘリコプターの間に十分な距離を取る必要があり、一定の広さがある農地でないと使えなかった。また、特定の時期に圃場(ほじょう)に向けて一様に散布するという使い方が中心だった。価格は1000万円ほどするため、農業協同組合や専門の防除業者でないと保有が難しかった。

もう一つの応用分野であるリモートセンシングは、稲などの生育状況の調査や深刻な被害をもたらす害虫の監視を空中から行うもの。農地の状態を観察し、状態に合わせて適切な量の肥料をまくなどして、収量と品質の向上を図るとともに、集めたデータを基に次年度以降の栽培計画を立てていく。こうした取り組みを「精密農業」と呼ぶ(図1)。

図1 セキュアドローン協議会が目指す「精密農業」のイメージ(出所:日経Robotics 2016年1月号)

図1 セキュアドローン協議会が目指す「精密農業」のイメージ(出所:日経Robotics 2016年1月号)

例えば、稲の葉色を十二段階に分け、ドローンを使って撮影し、最適の収穫時期を探る取組みを、セキュアドローン協議会が国内有数の稲作地帯で知られる北海道旭川市の水稲圃場で進めている。近赤外線カメラや、複数の波長の画像を同時に取得できるマルチスペクトルイメージングセンサーをドローンに搭載し、葉色の段階を見極める。旭川市には「ゆめぴりか」というブランド米がある。その品質を保つには、肥料量に応じた最適収穫時期を判断しなければならない。葉色からそれを見極めるわけだ。

■クラウドを利用して生産者を支援

精密農業にあたってはドローンのほか、センサーの利用も有効だ。例えば、人気の日本酒「獺祭(だっさい)」の製造元である旭酒造は、原料米を安定調達するために、山口県内で「山田錦」を生産する農家に「生産者支援クラウド」を導入してもらっている。

生産者支援クラウドとは、生産者がデータを収集・分析することを支援するクラウドコンピューティングサービスである。日々の作業実績や使用した農薬・肥料、稲の育成状況などに関するデータをタブレットやスマートフォン(スマホ)から入力し、記録・管理できる。データはクラウド事業者が用意するデータセンターに記録され、分析もそこでするので、農家は専用のコンピューターを用意しなくて済む。

さらに旭酒造は農家の水田にセンサーを設置し、気温や土壌の温度・水分といったデータを1時間ごとに自動収集し、定点カメラで生育の様子を1日1回撮影する取り組みを進めている。

これらのデータを蓄積・分析することで、最適な栽培手法を導き出し、農家に収穫量や品質を高めてもらうことを期待している。旭酒造が利用する生産者支援クラウドは富士通が提供する「Akisai」と呼ぶサービスである。富士通は自ら農業に乗り出した。2016年4月、オリックスや増田採種場と「スマートアグリカルチャー磐田」を設立し、静岡県磐田市に約10ヘクタールを確保して事業を開始した。

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