2018年4月23日(月)

検証、熊本地震で食器1つ落ちなかった住宅

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2016/10/18 6:30
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 A邸は間口が約5.5m、奥行きが約23mの細長い建物だ。建築基準法で求められる壁量に対する比率(壁量充足率)は、間口方向が1.19、奥行き方向が1.55。住宅を施工した工務店のコンフォートハウス(熊本市)は、住宅性能表示制度の耐震等級2~3程度の壁量(建築基準法で求められている壁量の1.25~1.5倍程度)を目安とし、住宅のバランスに当たる偏心率も小さくすることを標準仕様としている。

 そのため、A邸も細長い形状でありながら、耐震等級2に近い耐震性能を確保していた(図1)。制振システムは住友ゴム工業のミライエを採用。コンフォートハウスでは2015年から標準仕様として採用しているものだ。

図1 細長いA邸は壁量充足率1.2程度の壁量と制振システムで地震対策(資料:コンフォートハウスの資料を基に日経ホームビルダーが作成)

図1 細長いA邸は壁量充足率1.2程度の壁量と制振システムで地震対策(資料:コンフォートハウスの資料を基に日経ホームビルダーが作成)

 被害が小さかった理由の一つとして考えられるのが、建物の耐震性能が高いこと。A邸の場合、壁量充足率が高いことに加え、採用した制振システムがさらに耐震性を高めた可能性も考えられる。制振システムは1階の室内壁内に4カ所設置している。国土交通省の大臣認定を取得していないが、同制振システムは1枚当たり壁倍率5倍に相当する。このことを考慮して存在壁量を計算すると、A邸は耐震等級2の性能を上回っていたと考えられる。

■本震襲来でも「子供起きず」

写真3 本震後に撮影されたA邸のリビング・ダイニングの様子。壁際に設置してあった棚なども倒れたりすることはなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

写真3 本震後に撮影されたA邸のリビング・ダイニングの様子。壁際に設置してあった棚なども倒れたりすることはなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

 だが、耐震性能だけでは説明が付きにくい現象がA邸では起こっている。一つは室内の物がほとんど倒れなかったことだ(写真3)。

 制振システムは、躯体の変形量を抑えるのが特徴だ。免震のように、地震の揺れ自体を低減するものではない。ただ、壁が大きく変形しなければ、壁際の家具などが押し倒されることも少なく、壁につくり付けた棚の揺れ幅が抑えられる効果も考えられる。物が散乱しなかったことも説明できそうだ。

 本震の際にAさん一家が2階で体験したことも、その裏付けになりそうだ。「揺れは感じたものの、子供たちは目を覚ますことなく寝ていた」とAさん。2階では、制振システムが変形量を抑えた効果がより感じられた可能性も考えられる。

 室内の壁の被害が、熊本地震での一般的な状況と比べると小さいことにも注目したい。クラックが入りやすい塗り壁や、設備機器との取り合い部などは、前震と本震の2度の大地震に遭遇していながら、ひびや割れが生じなかった(写真4、写真5)。

写真4 塗り壁は地震などでクラックが入りやすい建材だ。だが、本震後、窓まわりを確認してもクラックは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

写真4 塗り壁は地震などでクラックが入りやすい建材だ。だが、本震後、窓まわりを確認してもクラックは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

写真5 キッチンの上部には天井付けの換気設備が取り付けられていたが、本震後に確認しても、取り合い部にクラックなどは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

写真5 キッチンの上部には天井付けの換気設備が取り付けられていたが、本震後に確認しても、取り合い部にクラックなどは見当たらなかった(写真:住まい手Aさんが提供)

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