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「素」の自分から飛躍 日本ハム・武田勝の11年間
編集委員 篠山正幸

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2016/10/4 6:30
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「11年間、スピードもなく、背も筋力もなくやってきたつもり」……。日本ハム・武田勝(38)が引退会見の場でみせた笑顔には小兵の不利を克服した満足感が漂っていた。球速、身長、筋力、どれをとってもプロの平均値を下回っていたと思われる投手の成功の秘訣は何だったのか。

基礎的な資質や才能に恵まれていなくても人一倍の努力と「つもり」で大成した=共同

基礎的な資質や才能に恵まれていなくても人一倍の努力と「つもり」で大成した=共同

「この球速で抑えられるのか」という驚き

身長176センチ、73キロ。引退会見で武田勝は「これで、もとの武田勝に戻れる」と話したが、スーツ姿で街中に溶け込めば、誰もプロ野球選手とは気づきそうにない体格だ。

見た目だけではなく、筋力もない、とはどうやら本当らしい。「体もぽやぽやで」(同僚でよく行動をともにしていたという増井浩俊)

直球は130キロに届くかどうか。そんな投手が、打たせながらも相手打線がぐうの音も出ないような抑え方をしていた。打者の振り遅れ気味のスイングをみれば、球速表示のみではわからない「実効速度」の高さがうかがわれた。

11年間の通算成績は82勝61敗1セーブと、際だったものではない。しかし「このスピードで抑えられるのか」という驚きで、常にファンをひき付けていたという点で、プロ中のプロだったといえる。

武田勝は関東一高から立正大、野村克也さんが監督を務めていた社会人のシダックスを経て、大学・社会人ドラフトの4巡目で2006年に入団した。

「28歳で入ったので、1年目からマウンドで結果を残さなければ、プロの世界は厳しいんだ、という意識をもって夢中でやってきた」

1年目の3月、楽天との開幕シリーズで、敵将となっていた恩師、野村監督の前で救援勝利を挙げるなど、この年5勝。以後、責任回数は確実に2、3点内に抑えるという安定感で優勝に貢献してきた。

その投球の秘訣の一つが出どころのわかりづらい、野手のような小さなテークバックにあったのは間違いない。

師匠は社会人時代に臨時コーチを務めた高橋一三さんだった。巨人、日本ハムで活躍した左腕、高橋さんのフォームも決して流麗とはいえないものだった。武田勝とは全然違うが、ちょっとぎくしゃくして間合いが取りづらそうな感じでは共通したものがあったようだ。そこにはきれいなフォームがいいフォームではないし、メシが食えるフォームというわけでもない、という思想も感じられる。「野村さんと高橋さん、その2人がいなければ今日ここ(引退会見の場)にはいなかった」と武田勝は話した。

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