2019年7月19日(金)

ヒト型ロボット隆盛 元祖アシモも進化磨く

2016/9/30 6:30
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ソフトバンクの「ペッパー」などで注目が高まるヒト型ロボット。日本の元祖ともいえるホンダの二足歩行ロボ「ASIMO(アシモ)」が静かに進化に取り組んでいる。時速9キロメートルで走る、紙コップに飲み物を注ぐ、障害物を予測してよけるなど高い身体能力で先行しているが、今後は感情を含めた対話力も磨く。生活での人との共存に向け独自路線が際立つ。

コップに飲み物を注ぐなど、人を手伝う作業を可能にする技術開発に力を入れている

コップに飲み物を注ぐなど、人を手伝う作業を可能にする技術開発に力を入れている

「それでは走ります」。東京都港区のホンダ本社1階ではほぼ毎日、アシモが運動機能を披露して外国人観光客らの注目を集める。身長130センチ、体重50キログラムの体で走るほか、片足ジャンプで歩いたり、歌ったり。人間に近い安定した身のこなしだ。約30年間で蓄積した研究データと最新技術が生かされている。

ホンダのヒト型ロボットの研究は1986年に始まり、当初は下半身だけの試作機で、1歩に5秒もかかっていた。本田技術研究所基礎技術研究センターの重見聡史執行役員は「ロボットが人と共存するには一緒に歩けないといけない。人の筋肉、骨格、関節、反射を工学的に分析し、二足歩行を徹底的に極める」と話す。2011年秋に公表した最新型アシモは片足ケンケンや後ろ歩き、凹凸の路面でも柔軟にかかとや上半身の姿勢を変えて歩くことができる。

頭から足まで計57カ所が関節のように自由度があり、従来より約2倍多い。足や腰にある力や傾斜を把握するセンサーで、重心と傾きを把握し、コンピューターで3歩先までの姿勢を予測してバランスを取る。最も難しいのは両足が地面から離れた時で、開発当初は着地の衝撃で部品が飛ぶなどの失敗を繰り返した。現在は上半身をひねったり、かがめたりし、重心を瞬時に動かす制御技術で、駆け足やジャンプもできる。

大きな進歩は腕を使う作業だ。カメラの視覚と、手のひらや指先に内蔵したセンサーの触覚で、物体の認識技術を開発した。5本の指にセンサーを内蔵し、それぞれの関節を独立して制御する。水筒の蓋をひねって外し、柔らかい紙コップを潰さずに持って、液体を注ぐことが可能になった。視覚と触覚の2つの信号を組み合わせ、作業状況を認識しながら完了する。

アシモの現行モデルを開発した本田技術研究所の重見聡史執行役員

アシモの現行モデルを開発した本田技術研究所の重見聡史執行役員

今後の課題は人との対話力にある。すでに3人が同時に発する言葉を聞き分ける能力を持つが、共存するには「相手が満足しているかどうかを表情やしぐさから読み取り、感情にあわせた行動ができるようにしたい」(重見執行役員)。認識する言語も日本語と英語だけでなく、20年の東京五輪を見据えて、中国語やフランス語などへの対応も検討する。

ヒト型ロボットはソフトバンクの「ペッパー」が小売店や銀行などに並び、日立製作所も「エミュー3」の実用化を表明した。一方で身体能力で大きく先行するアシモの実用化は未定。重見執行役員は「生活の役に立ってこそロボット。社会に貢献する作業ができるようになってから出したい」と独自の道を歩む。

ホンダ社内にはロボット開発の目的を描いた1枚の古いスケッチがある。女性が「こっちだよ」と声をかけ、背の小さいロボットが複数の荷物を持ちながら階段をのぼり「もう少しゆっくり歩いて下さい」と話しかける。人の生活にロボが溶け込んだ様子そのものだ。

ヒト型ロボの初期型は182センチ・210キログラムの大柄だったが、現在は威圧感を与えない小柄になり、スケッチのイメージに近づいた。今後は人工知能(AI)の活用などを含め、異業種との連携にも注目が集まる。

(企業報道部 工藤正晃)

[日経産業新聞9月30日付]

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