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豪・栄・道 それぞれの文字に込められた思い

2016/9/27 12:53
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豪・栄・道――。全勝で沸いた秋場所の国技館内に響き渡る豪栄道コール。3つの漢字を区切って叫ぶファンの声がすっかり定着した。本名・沢井豪太郎。師匠は境川豪章(元小結両国、本名・小林秀昭)。どちらも名前に「豪」の字が付く。

大相撲秋場所で初優勝し、笑顔の豪栄道(中)と境川親方(左)=25日、東京都足立区の境川部屋

大相撲秋場所で初優勝し、笑顔の豪栄道(中)と境川親方(左)=25日、東京都足立区の境川部屋

境川親方が姓名判断を広島の女性にお願いしたところいくつかの候補の中に「豪章」というのがあった。親からもらった名前にこだわる親方は「これも本名と同じ《ひであき》と読みます」と言われ即断した。その時「何年か後に豪にまつわる人との巡り合いがあります。その人は絶対、部屋に来ます」と言われた。

2年後(2005年1月)高校横綱の沢井豪太郎が入門した。「不思議な縁だと思ったですねえ」。親方の日大相撲部4年の時に1年で付け人をしていたのが現在の埼玉栄高校の山田道紀相撲部監督。沢井の十両昇進にあたり山田監督から「先輩、こういうのを考えています」と提示されたのが豪栄道。因縁の豪という字は「力の源」だという。栄は母校の埼玉栄から。道は相撲道と監督の名前から1字を取った。

境川親方は、角界でもその"熱い"硬派な人柄で知られる。「今の時代にそぐわないかもしれないけれど、長崎の同郷の先輩(元幕内吉の谷)に義理人情の大切さを教えられた。それは損してでもちゃんと男の道を通すというような『受けて忘れず、施して語らず』というようなことです。相撲は男を磨く修行です」

平常から師匠は口を酸っぱくして豪栄道ら部屋の力士に語る。それは「恩返し」の心だ。2010年、豪栄道、豊響は野球賭博汚染の渦中にあった。一場所出場停止、親方も謹慎処分を受けた。親方の実家に脅迫電話があったり、玄関の表札が取られたり、親方の家族にも迷惑をかけた。その時、豪栄道と豊響は、頭をこすりつけて2人の子供に謝ったという。

境川親方は「夢はあきらめて、覚めたら終わりじゃないですか。もう一つ上はとてつもない高さですけど、現役のうちは目指すしかない」。本当の恩返しはこれからか。

豪栄道の全勝と遠藤の13勝。この秋場所、2人は飛び抜けた成績を残しただけでなく、端正な所作で土俵の美を見せてくれた。最後の塩に分かれるとき、モンゴル力士のマネでせかせかと急いで向かう動きは、もう見慣れた光景になってしまっている。モンゴル力士登場以前は、力士はここで「悠揚迫らぬ」態度で勝負へ臨んだものだ。とりわけ遠藤の正統な相撲、所作、これを手本にすれば大相撲の土俵はもっと美しくなる。

(編集委員 工藤憲雄)

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