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若きサッカー日本代表、U17W杯出場が生む好循環

U-16(16歳以下)の男子日本代表が大きな成果をあげてくれた。インドで開催中のU-16アジア選手権でベスト4に入り、上位4チームに与えられる来年のU-17ワールドカップ(W杯)インド大会の出場権を獲得してくれたのだ。世界の登竜門といえるU-17W杯の舞台に立てることは日本サッカーにとっても、選手たちにとっても、有形無形の財産を手にすることになるだろう。

リオ五輪で日本は1次リーグ敗退。サッカー界では年齢ではなく経験値が大切だ=共同

力の差歴然、破竹の快進撃だったU16

今大会の日本代表は破竹の快進撃を見せた。1次リーグはベトナム、キルギス、オーストラリアと同じB組に属し、3連勝の1位でクリアした。ただ勝つだけでなくスコアがすさまじかった。16日のベトナム戦は7-0、19日のキルギス戦は8-0、そして22日のオーストラリア戦は6-0の大勝だった。2位で勝ち上がったのはベトナムで、キルギス、オーストラリアとの戦いは三つどもえだったから、B組では日本の力が飛び抜けていたことになる。

韓国やサウジアラビアが1次リーグで姿を消す中で、日本は25日の準々決勝もアラブ首長国連邦(UAE)をDF瀬古歩夢(C大阪)のゴールで1-0と下した。スコアは1点差でも力の差は明らかだった。ボールを保持して試合の主導権を握り続け、決定的なシュートを何本も放った。後半途中で得たPKをFW宮代大聖(川崎)が決めて2点差にしていれば、そこでUAEの心は折れていたと思わせるような、一方的な展開だった。

2点目をなかなか取れずに苦労したが、それがW杯出場を懸けた試合の厳しさともいえる。2点目を取りにいくのか、1点を守り切るのか。こういう試合ではそういう分岐点が終盤に必ず訪れる。1968年メキシコ五輪以来のオリンピック出場の扉を押し開けた、96年アトランタ五輪アジア最終予選もそうだった。勝った方が五輪に行けるという準決勝のサウジ戦、2-1とリードした日本の選手たちは過去に経験したことがない重圧に終盤は襲われて大いに苦しんだものだ。

飛躍的成長には重圧という負荷が必要

戦う相手はUAEの選手だけではなく、自分自身を押し包むストレスやプレッシャーだったりする。大げさではなく、目の前の試合が自分の人生の分岐点のように感じられる。それだけに、その最後の壁を自力で乗り越えたとき、選手は飛躍的に成長する。勝った瞬間には、もう、自分たちでも気づかないくらい大きく伸びている。プレッシャーという負荷は大きければ大きいほど、その選手の未来のためになり、もがけばもがくほど身につく力も大きくなるといえる。

今回の若き日本代表の優れた資質はデータにもよく表れている。出色なのは、ミドルサード(縦100メートルあまりのピッチを3等分したときの真ん中の区分。いわゆる中盤と呼ばれるところ)からアタッキングサード(3等分したときの相手のペナルティーエリアを含む攻撃の仕上げの区分)に入るとき、ドリブルでも侵入していけることである。ドリブルだけでもパスだけでもない。どちらも使うことができる。これは守る側にすれば、的を絞ることがなかなかできず、非常に厄介だ。

そんな日本の攻撃を象徴する選手がFW久保建英(FC東京)である。ミドルサードではシンプルなプレーに徹している久保がアタッキングサードにかかると非常に好戦的に変身する。といって常に無理なドリブル突破を仕掛けているわけでもない。DFがパスを読んでいると思えばドリブルで仕掛け、ドリブルに備えているなと思えばパスに切り替えて実に変幻自在。

日本には珍しいタイプのアタッカーの久保は思考法そのものが武器=共同

だいたい、久保の場合、アタッキングサードでボールを受けると4割はドリブルでの仕掛けにトライする。ドリブル後のスルーパスの本数もチームで1位。このドリブルした後にスルーパスを冷静に出せるのも久保の特長の一つ。ドリブルすると並の選手はボールを見てヘッドダウンしてしまうのだが、久保はドリブルしながらでも周りがきちんと見えている証拠だろう。

我々、指導者は、選手にドリブルを教えるとき、DFの重心や体の向きがどうなっているかを見定めろ、などとアドバイスするけれど、久保の場合は重心どころかDFの心理まで見取りながらドリブルしている感がある。「突破かパスか」ではなく「突破もパスも」あるから守る側は常に考えさせられる羽目に陥る。考えさせられ、出した答えに対し、その答えを上回る選択肢を持ってくる力が久保にはある。丸暗記した答えを、どんな設問にも当てはめて解こうとする丸暗記型のワンパターンな選手ではなく、相手の弱点をすぐに見つけてそこを徹底的に突いていく、思考法そのものが武器というか。日本には珍しいタイプのアタッカーだろう。

中3の久保が引き起こした化学反応

そういう選手がいることで起きる化学反応も今回のチームからは見受けられる。中学3年生の後輩に負けてはいられないという前向きなライバル心もあるのだろう。FW棚橋尭士(横浜M)やMF鈴木冬一(C大阪)らも果敢なドリブル突破を試みる。6月に鳥取で行われた国際親善大会で見たときより、みんな、格段にうまくなり、リズム感が良くなっている。優秀な選手を集めて互いに競わせると、刺激を受け合った選手は急激に伸びていくものだが、若い選手ほど、その伸び率は大きいということだろう。

U-16の日本代表は過去のアジア選手権で2006年(優勝)、08年(4位)、10年(3位)、12年(準優勝)と4大会連続で好成績を収め、W杯に出場してきた。その行進に待ったをかけられたのがベスト8で不覚をとった2年前のタイ大会だった。ここまできたら10年ぶりの頂点を目指してほしいものである。

快進撃を続けているU-16代表に気になることがあるとすれば、セットプレーからシュートを打たれすぎていること。今大会は準々決勝まで無失点を続けているので、初失点で先制されたりすると、そこで歯車が狂うことも考えられる。今回のメンバーはそういう試練も乗り越えてくれそうな気はするが……。

苦労してW杯出場を決めた選手に冷や水を浴びせる気はないが、この年代の選手はこれからまだまだ曲折があるものだ。私の経験上、ここから先は努力する才能のある選手が伸びていく。今回、出場権を獲得した選手たちに来年の本大会に出られる保証はないのだから、さらに精進を重ねてほしいと思う。

選手個々ではなく、サッカー界全体のこととして考えた場合、今回のU-17W杯出場決定は、日本サッカーがいいサイクルに入ったことを意味する。来年のU-17W杯に出場した選手たちは、次は19年のU-20W杯出場を目指すことになる。予選は18年にアジア選手権を兼ねて行われるが、U-16で強さを誇示できたことは2年後、同じ世代の選手と再び相まみえる際に必ず生きてくるだろう。

もし、U-17のW杯に出場した選手の中から、19年のU-20W杯の舞台を踏む者が現れたら、その経験は20年の東京五輪にも役立つことだろう。現在のU-16の選手たちは4年後の東京五輪の年には20歳前後だから、U-23の五輪のくくりより若いことになるが、サッカーの世界に年齢は関係ない。一番大切なのは経験値だ。リオデジャネイロ五輪で優勝したブラジルもオーバーエージのエース、ネイマールのパートナーになったのはガブリエルジェズス、ガブリエルバルボサら20歳前後のタレントだった。

W杯アジア最終予選でB組3位と出遅れた日本代表は10月の2連戦が大事になる=共同

世界と同じく、日本も「年齢」ではなく「経験値」がモノをいう時代に早くしないと、彼らと伍(ご)して戦うことなど無理なのである。そのトップランナーに今回のU-16の選手たちがなってくれたらと思う。彼らが、これから待ち受ける幾多の試練を乗り越えて、力をつけて、先輩たちを突き破る存在になってくれたら、日本サッカーの未来は明るいものになると確信している。

さて、彼らの一番上の先輩にあたるフル代表は10月早々にW杯ロシア大会アジア最終予選が待ち構えている。6日にホームでイラクと対戦した後、メルボルンに飛んで11日に強豪オーストラリアと対戦する。9月の連戦でUAEに敗れ、タイに勝って1勝1敗のB組3位と出遅れた日本にすれば、非常に大事な2連戦になる。

日本代表、戦う相手よりも日程に不安

最終予選の組み合わせが決まった当初は「悪くない日程」といわれたが、現在の日本代表を苦しめているのは戦う相手よりも日程の方という気がしている。9月からの4試合は「日本で戦ってからアウェーに行く」という順番になっているが、欧州組が増えた現在、この順番が選手を苦しめ、ハリルホジッチ監督を悩ませているように思う。国内組はこの順番で何の問題もないが、欧州組は日本への長旅の疲れ、日本との時差ぼけがほどけないうちにホームゲームがやってくる。ようやく体が慣れたと思ったらすぐにアウェーに移動。欧州組のコンディションだけを考えたら、欧州に近いUAEやイラク、サウジアラビアなどとアウェーで試合をしてから日本に戻ってホームゲームを戦う、という順番の方がよほど楽だったのではないか。

それに加えて欧州組の中にも試合に出ている選手と出ていない選手がいる。これではチームに合流した後のトレーニングも個別のメニューを用意せざるをえない。全員に同じ強度、同じ内容のトレーニングを課すのは難しいということは、必然的に、全員で戦術的な擦り合わせをするような練習は限られた時間しかできないことを意味する。監督として選手のコンディションその他、見極めなければならないことは多岐にわたるわけで、想像されている以上に、これは大変な作業なのである。

(サッカー解説者)

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