有機ELスマホが足踏み?パネル品質に難も

2016/9/27 6:30
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スマートフォン(スマホ)のディスプレーに搭載が進む有機ELパネルが足踏みを始めている。中国スマホメーカーの成長株、OPPO(オッポ)が全機種に有機ELを搭載する方針を撤回し、液晶パネルを大量発注。スマホメーカーの中で液晶を再評価する声も強まっている。次世代ディスプレーと期待される有機ELに急拡大のひずみが表れている。

スマホ向けの有機ELパネルは韓国サムスン電子が主導してきた(サムスンの有機EL採用のスマホ)

スマホ向けの有機ELパネルは韓国サムスン電子が主導してきた(サムスンの有機EL採用のスマホ)

OPPOは高性能スマホを手掛け、今最も勢いのある中国メーカーだ。足元の出荷台数で前年比3倍のペースで成長、韓国サムスン電子、米アップル、中国華為技術(ファーウェイ)に次ぐ世界4位。そのOPPOが8月以降、液晶パネルの調達量を増やしている。

スマホ向け有機ELパネルをほぼ独占的に手掛けるサムスンディスプレー側がOPPOに対して月1000万台規模のパネルを供給できなかった。さらにOPPO側が求めた高性能パネルの品質基準をサムスン側が達成できなかったという事情もあったもようだ。

OPPOの販売計画を達成するためには月あたり数百万枚規模のパネルが不足する。そこで同社が頼ったのが高性能の液晶パネルを大量に供給できるジャパンディスプレイ(JDI)だ。工場稼働率が低迷していたJDIにとっても「渡りに船」だった。

OPPOだけでなく、高性能スマホを手掛ける中国メーカーに液晶パネルへの揺り戻しの動きが広がっている。そのためシャープも含めた国内外の液晶パネルメーカーの受注が緩やかに回復している。

有機ELと液晶を比較すると、画素の密度を表す「解像度」や「製品寿命」、「調達価格」は液晶が依然優位だ。解像度は高ければ高いほどきめ細かな美しい画像を映し出せる。現時点では液晶は安定性も高く、有機EL特有の問題である画面の焼き付きも起こりにくい。さらに有機ELはサムスンが独占的に供給しているため調達費用で考えても液晶が有利だ。

一方で有機ELが優れているのは色彩の鮮やかさの指標「コントラスト比」と素早い画面表示の「応答速度」、そして端末形状を自由に設計できる点だ。ただ曲げたり折り畳んだりすると物理的な負荷がかかる部分の発光材料の劣化が激しく、まだ実用レベルではない。タッチパネル表面の保護部材をどうするかといった課題も多い。

「有機ELは材料技術を確立できておらず、まだ発展途上」と話すのはディスプレー産業に詳しいテック・アンド・ビズ(大津市)の北原洋明氏。同氏は「色鮮やかさで有機ELを超える技術も開発されており、液晶の技術的な伸びしろはまだ大きい」と分析する。

今後の有機EL普及のカギを握るのは、スマホの技術革新をけん引してきたアップルだろう。ディスプレーメーカーへの影響力の大きさに加えて、世界中のスマホメーカーがiPhoneの技術動向を注視しながら自社スマホの設計開発につなげているためだ。

関係者の話を総合すると、アップルは折り畳み型の新型端末を志向し有機EL採用を検討し始めた。普段はポケットに入れておき、動画を見る際にタブレットほどの画面に広げられる端末を想定している。ただ現時点の材料技術ではアップルが求める折り畳めるスマホの実現には時間がかかりそうだ。

有機ELの進化の歴史をたどると、10年ごとに節目を迎えてきた。1987年に米コダックが有機EL技術を発表し、97年には東北パイオニアがディスプレーを生産。2007年にはソニーが有機ELテレビを発売した。来年に迫る次の節目にアップルの有機EL採用となるのか。ディスプレー業界が同社の動きを固唾を飲んで見守っている。

(企業報道部 細川幸太郎)

[日経産業新聞2016年9月27日付]

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