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もう1人のエースとして…成長続けるロッテ石川

本人は否定するだろうが、今や涌井秀章(30)と並ぶロッテのエースといっていいだろう。3年目の石川歩(28)。14勝は和田毅(ソフトバンク)に次ぐリーグ2位。新人から3年連続の2桁勝利は球団初の快挙だ。防御率2.16はリーグトップ。2位の千賀滉大(ソフトバンク)に0.46の差をつけており、タイトル獲得が確定的となっている。

石川は新人から3年連続2桁勝利となった。伊東監督からの信頼も厚い=共同

今季前半戦は圧巻の内容だった。オールスターゲーム直後の7月22日、有原航平(日本ハム)、和田と同じ日に10勝目を挙げた。石川はこの時点で3敗していたが、そのスコアは1-2(ソフトバンク)、1-2(ソフトバンク)、0-4(日本ハム)。味方の援護がないなかですべて7イニング以上を投げており、先発投手としての役目は果たしている。

6月24日の西武戦(前橋)のように5回5失点ながら打線の大量得点で勝ちを拾った試合もあるが、次のオリックス戦はしっかりと立て直して今季初の完封勝ち。2度続けて試合をこわすことはなかった。10勝達成時には伊東勤監督も「エース級との対戦でどれだけ勝てるか、それぐらいの投手になった」と語った。その成長ぶりへの評価と厚い信頼をうかがわせる。

涌井に学んだメリハリある投球

ひょうひょうとした風貌のとおり、クセのないフォームから投げ込む140キロ台後半のストレートが主体。そこに100キロ台のカーブと時折見せるスライダーを織り交ぜる。勝負球は左打者の外へ逃げていくシンカー。これらの組み立てにより、1年目にいきなり10勝をマークして新人王を獲得。昨季も12勝を挙げている。

一方で黒星も1年目が8、昨季が12を数えた。勝ったり負けたり、と安定感に欠ける投げてみないとわからないタイプにも見える。それが今季は負け数をぐっと減らして貯金9つと、見違えるような成果を挙げている。その要因を落合英二投手コーチは「去年まではもったいない投球が多かった」と分析する。

打者を追い込みながらボール球を使えずに詰めが甘くなったり、無理に行く必要のないところで勝負に行って痛打を浴びたり……。「それが負けに直結するケースが多かった」と落合コーチはいう。しかし今季は投球にメリハリが出てきているという。「それは間違いなく涌井を見て学んだことでしょう」。過去3度最多勝のタイトルを手にし、今季も2桁勝利を挙げている涌井。誰もが認めるロッテのエースも、常に目いっぱいの投球を見せているわけではない。

長いイニングをまかなう先発投手の役割を果たし、かつ1シーズンを乗り切るのにそれでは対応できないからだ。長年培ってきた実戦経験によってその試合の勝負どころ、肝となるポイントを感じ取り、そこにパワーと全神経を注ぎ込むのが白星への近道と理解している。「3年間モニターを通して涌井を見てきて、ここぞでのギアの上げ方、力の入れ方みたいなものが(石川も)わかってきたのでは」と落合コーチは話す。

決して力投型ではない石川の投球スタイルだが、マウンドを降りた後のコメントも同様にどこか力が抜けている。勝利投手になったのに「真っすぐがコントロールできていなかった」「思っているようなボールがいかなかった。なんか気持ちが悪い」と後ろ向きの話ばかり。シーズン中に防御率トップに立ったと問われても「すぐに消えますから」。

最多勝を狙えるのに石川(右)は次の登板を「CSですかね」。これには伊東監督も苦笑い=共同

完封、完投にもこだわりはないようで、勝ち投手の権利を持って7回を投げ終えても、投手コーチが状態の確認に行くと、「もういっぱいいっぱい」「無理です」と石川。我を通してチームに迷惑がかかっては、との当人には当たり前の考え方によるのだろう。が、ベンチとしては歯がゆい部分もあったようで、今季、春先に落合コーチが「石川が『まだ行けます』なんて言ってこないかな」と苦笑いで話すこともあった。

そんな石川だから、個人タイトルにもきわめて無頓着だ。今月24日のオリックス戦に先発。勝って15勝目を挙げれば和田と並んで最多勝を手にすることができる。しかし、もともと22日だった登板予定が雨のためにスライドし、24日もあいにくの雨。開始が42分遅れ、試合中も足元を気にしながらの投球となった。「若干やりづらいところはあった」と語った結果は6回で8安打3失点。

今季5試合を完投、うち完封勝利が3

「(打者を)追い込んでから雑になった。コントロールできていなかった」と不満げに振り返った。さらに次の登板について聞かれると「CS(クライマックスシリーズ)ですかね」。最多勝を狙ったレギュラーシーズン中の再登板については「いいです。体もしんどいんで……」とまったく意欲を見せず。これには伊東監督も苦笑い。「『もういい』って。珍しいヤツですよね。こんなチャンス、次がいつ来るかわからないのに。投手コーチが説得してみるといっていたけど」

勝ったのに「真っすぐがコントロールできていなかった」と語る。コメントも力投型ではない=共同

それだけに、7月2日はこれまでにない前向きさを出した登板となった。八回表を終えて3-0。当然九回は抑え投手の出番の予定だったが、石川自らブルペンに電話をかけて「(九回も)行かせてくれ」と直訴した。味方が追加点を取って6-0と点差が広がったこともあり、要望通りに九回もマウンドへ。ピンチを抑えて見事に1年ぶりの完封勝ちを手にした。ちょうどこの日はセットアッパーの内竜也が右ひじ痛で登録抹消となっていた。おそらくは先々も見据えてブルペン陣の負担を考慮しての続投志願だったのだろう。

3年間積み上げた実績は他球団も認めるところだ。1年目は2つ、昨季は3試合だった完投が今季はすでに5試合。さらに完封3つとなると両リーグトップである。チームは失速気味ながら、なんとか3位を確保し、CSへの出場権をつかんだ。

今季、石川の対ソフトバンク戦は連敗スタートの後、8月に2安打完封で雪辱。日本ハムにも1勝1敗の成績を残している。ファーストステージで対戦するのはどちらか。涌井、そして点を取られないこの石川の二枚看板は非常にやっかいな相手である。

(土田昌隆)

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