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イチローの言葉でひもとく 打撃技術の粋
スポーツジャーナリスト 木崎英夫

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2016/9/22 6:30
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初秋を迎えた9月半ばの米アトランタ。日本人記者はたったの2人。異能の打者が向かった節目の記録に、にわかに集結したメディアの喧騒(けんそう)も今はない。

涼風のそよぐ同地で、イチローは技術の粋を伝える漆黒のバットで、快打を連発した。

12日からのブレーブス戦で3試合連続の打点を挙げた=共同

12日からのブレーブス戦で3試合連続の打点を挙げた=共同

12日からのブレーブスとの3連戦で、通算900度目とする2試合連続の複数安打を放ち、代打起用された3戦目には犠飛で3戦連続の打点を稼いだ。このカードで放った5安打はすべて力強く引っ張る右方向への打球。マーリンズのマッティングリー監督は「(8月には)ガス欠になったようにも見えたが、突然打ち出している」と目を丸くした。

9月を迎え間もない頃、イチローはこう喝破した。

「気持ちで打ったことは一度もない」

4日のインディアンス戦で、長身左腕ミラーから外角低めゾーンいっぱいにくるスライダーを捉える適時二塁打を放ったが、バントをやり損ね4球ファウルで粘った後だっただけに、気持ちが入ったかを問われ、返したのが先の言葉だった。

以前は、技術に関して滋味豊かな言葉を発していたイチローだが、シアトルを去ってからはチーム事情から控えに甘んじていることもあり、日々の囲みはめっきり減っている。ならば、年間200安打を10年続け、大リーグ通算3000安打への布石を敷いたあの頃の言葉をひもとき、今に通じる、秀抜な技の深淵をのぞこう。

意志映す右足のステップ修正

2004年、イチローはジョージ・シスラーが保持していた大リーグ年間最多安打記録の257本を更新した。その年の夏場前に、構えを修正。右足を開き気味にして背筋を伸ばしたことで、バットのヘッドは一塁ベンチ方向に寝た。これが盛夏の爆発的な安打量産へと結びつく。誰の目にもわかりやすい変化だったが、実は、これまでにない斬新な視角からの意識改革とつながっていた。

04年の暮れも押し迫った12月30日。神戸で会ったイチローは、その年の道のりを振り返った。よどみなく語る中で明らかになったのは、新たな取り組みを施して臨んでいたことだった――。

「これまで僕はヒットに必然的になるような当たりがヒットになるものだと思っていた。でも、それだけでは増えない。限界がある」

安打数はデビューした01年の242本から02年は208本止まり。3年連続の200安打は前年より4本の上積みでクリア。1年目と開きが出ていたことに焦慮し、思索を巡らせた――。

行き着いたのは、右足のステップの修正だった。それに伴う一連の動作は「時間をかけて新しい形の癖をつけ体に覚えさせた」。幸運にも、その手応えを早々につかむ。

04年4月6日、シアトルでの開幕戦だった。マウンドには同じ1973年生まれで今もメッツで活躍するバートロ・コローンがいた。イチローは第1打席で、内角低め155キロの速球を打つ。結果は、遊撃後方にポトリと落ちるヒット。力負けに見えた当たりだったが、時のエンゼルスの剛球右腕から放ったその打球にこそ、84年ぶりの大記録へ向かう鍵が隠されていたのである。

「見逃せばボールだったかもしれない球。でも、ステップの位置が変わったことによってヒットにできたもの。踏み込んだときの(右)足の位置は気持ちが入っていくとどうしても球に向かっていこうとする。それがあまりにも強すぎてバットで捉えるときには苦しくなってしまっていたことがあった」

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