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巨人・高橋監督、マイナスからの出発と1年目の評価

編集委員 篠山正幸

非常事態下の緊急登板的な色彩を帯びてスタートした巨人・高橋由伸監督の1年目は2位というゴールも視野に入ってきた。野球賭博問題の余波、先発陣の出遅れなどがあり"マイナス"からの戦いとなった割には健闘したといえるのではないか。

混乱のなかでの現役引退、監督就任だった。一部選手による野球賭博問題が明るみに出たのが、昨年10月。巨人の屋台骨すら揺るがすような事態の一方、原辰徳前監督が勇退。後任人事案として急浮上してきたのが高橋監督だった。

地道に歩を刻もうという現実路線こそ、高橋監督の信条にみえる=共同

昨年10月26日の就任会見で「まだまだ現役でできると思っていた」と語った本人にも青天のへきれきだったはずだ。

不祥事と監督人事は直結するものではないだろうが、落ちかけた巨人のブランドイメージをかろうじて保てる清新なイメージを持つ候補、と見込まれたことは想像に難くない。

地道に歩刻む現実路線こそ信条か

原監督の後任人事に関しては「人心一新、新しい風を吹き込むこと」(白石興二郎前オーナー)が必須の条件だった。「その条件に当てはまるのは高橋君しかいない」と白石前オーナーは高橋監督の就任会見で語ったのだった。

新監督の船出としては酷な状況だった。前オーナーが「どちらかというと下降曲線にある」と語っていたように、チーム全体が世代交代期にさしかかっていた。原監督下、安定した成績を挙げていたチームも阿部慎之助の衰えに象徴される主力の高齢化などへの対応が急務となっていた。

この点、高橋新監督はどう考えているのか。就任会見のポイントの一つだったが、答えは「改革」「新機軸」を期待する向きには拍子抜けするものだった。

「阿部、長野(久義)、坂本(勇人)、菅野(智之)、内海(哲也)、このへんが中心にならないと強いチームは作れないと思う」

それはそうに違いないが、もう少し目新しい名前が出てこないものか……。

しかし、あれから1年が過ぎようとする今、あの凡々たる答弁のなかに、高橋監督の浮ついたところのない考え方がにじみでていたのかもしれない、とも思われる。

改革、若返りとぶちあげるのは簡単だが、人材はいるのか、育成体制はどうか。一朝一夕にいくものではない。

ベテラン、中堅に何とかチームを支えてもらいながら、徐々に切り替えていこうという漸進路線。現実離れした夢をみるのでなく、話題づくりに走るのでもなく、地道に歩を刻もうという現実路線こそ、高橋監督の信条なのかもしれなかった。

こうした実直さのゆえか、仲間からの慕われ方は半端ではない。井端弘和現コーチは昨季限りでの早すぎる引退の理由について、高橋監督と同時にユニホームを脱げて本望、といった言い方をしていた。

井端コーチだけでなく、他球団の次代の監督候補とされる人物が「高橋監督の下なら、いつでもはせ参じ、コーチとして支えたい」と語るのを聞いたことがある。井端コーチの唐突な「告白」には多少の違和感があったが、他の人々の話も合わせると、人望の厚さに納得させられる。

阿部ら主力の高齢化などにどう対応していくか=共同

監督1年目の評価は先日のオーナー会議で記者に囲まれた老川祥一オーナーによれば「今年は賭博問題とかいろいろ想定外の事態があって、スタートのときから厳しい状態だったから、非常に苦しい展開になることは予想されていた。その中ではよく頑張っている」というもの。

まだまだ現役でやれる選手に、難局下で監督という大役を担わせた。そんな思いもあるだろうフロントとしては広島と大差の2位ではあるが、一定の評価をするのは当然かもしれない。

「チームは下降曲線」の認識が再興の鍵

先発陣の編成に苦しむなど、終始不安定な戦いを強いられた1年だった。打線も坂本がめざましい成績を残している以外はぱっとしない。そもそも「代打高橋」がいなくなってしまったこと自体、大きな戦力ダウンだった。

やり繰りを強いられるなかで、セ・リーグの球団にとっては鬼門となっている交流戦を9勝9敗の5分でしのぎ、シーズン全体としても勝率5割をキープしようかという成績はまずまず。これも高橋監督への周囲の「信」がもたらしたものかもしれず、チームの新陳代謝が進んだ結果といえるかどうか。

野球どころではない、といった雰囲気で始まった1年を何とかやり過ごし、本当の勝負は来季から。ポストシーズンの結果にかかわらず、チームは下降曲線にあるという認識を持ち続けることが巨人再興の鍵になる。

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