2019年9月24日(火)

働く力再興 私の提言

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「副業解禁・再入社容認…年功、評価に値せず」 青野慶久氏
サイボウズ社長

2016/9/16 2:00
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 ――社員の離職率が高まったのを機に、副業の自由化や週3日勤務、一度退社しても再入社できる制度など多様な働き方ができる人事制度を取り入れました。

青野慶久 サイボウズ社長

「一つの会社の中で朝から晩まで長時間労働をしている社員がイノベーションを生み出せるだろうか。とくに(サイボウズのような)ソフト産業は人が価値を創り出す産業だ。例えば、副業の自由化は外部の知識を社内に取り込む経営戦略の一つと位置づけている。本人にとっても副業により気分転換ができ、時間あたりの生産性が高まるという効果がある」

 ――会社にとって実際にどのような効果があったのですか。

「サイボウズで働きながら、平日の朝や週末に農業に従事する社員がいる。この社員は農業分野のソフト開発を受注するなど、新しい仕事を開拓している。農業とクラウドの両方が理解できる人材は世の中にもそれほどおらず、そうした人材が社内にいるのは強みだ。副業を禁止していないことが理由で入社してくる社員もいる」

 ――多様な働き方ができる会社は社員にとって「ゆるい会社」ですか。

「ゆるくないと思う。副業をする社員がサイボウズの業務に費やす時間が減れば、その分給与は下げている。他で稼いで下さいということで、社員は生計をどう立てていくか自分で考える必要がある。給与制度も年功序列ではないので、年齢を重ねる中で、自分のキャリアパスを意識せざるをえなくなる」

 ――なぜそこまで多様な働き方にこだわるのですか。

「我々の競争相手はグーグルやマイクロソフト、米IBMといった人材や資金量、歴史が比べものにならない企業だ。一歩間違えればすぐにはじき飛ばされてしまう環境下で、社員を年功序列で評価しても勝ち目はない。いかに人材を集め、社員のモチベーションを高めていくか考えるのは、我々にとって生存戦略だ。生産性向上という言葉は安っぽく聞こえるので、あまり好きではないが、そうしないと事業が成り立たない」

 ――政府は「働き方改革」に本腰を入れる方針です。企業経営者として何を期待しますか。

「個人的には少子化を何とかしなければと考えている。少子化を止める働き方改革にしっかり取り組んでほしい。男性社員が早く帰宅し、家事や育児に従事すれば、出生率の向上にプラスになるというデータもある。また、海外からみると、日本の会社に入ると長時間労働で大変な目にあうという印象があるかもしれない。日本の働き方が世界の先端をいくようになれば、日本で働きたいと考える外国人も増える。それは経済にとっても良い効果を生む」

「企業や社員も変わる必要があると思う。日本の企業社会に年功序列の制度はいまだに強固に残っている。これにメスを入れようとすると多くの社員が強く抵抗するだろう。だが、年功序列で評価している限り、その会社は価値をあまり生まない社員に過剰に給料を出す構造が残る。価値を生んでいる社員からみれば、正当に評価されていないという不満につながり、優秀な社員ほど徐々に辞めていく。大企業自身が早くその点に気づき、年功序列の制度を撤廃できるかが、日本社会が変わる一つのカギとなるだろう」

■記者から

少子高齢化がますます加速し、日本の社会は様々な分野でこれまでの延長線上ではない改革を求められている。中でも働き方改革は、漸進的な見直しでは効果が乏しい最たる分野だろう。サイボウズの事例を比較的歴史の浅い企業だからこそ可能な制度と異端視せず、個々の社員と企業がキャリアや経営を見つめ直すきっかけにすれば、新しい可能性が開ける。

(中野貴司)

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