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9月の嵐、ヘッジファンド騒然

筆者の周辺が今朝は久しぶりにざわついている。先週金曜の米ニューヨーク(NY)株急落を受けた月曜朝のアジア時間帯に、ヘッジファンドたちがチェックを入れてくるのだ。

9日のNY市場では、市場の不安度を示すVIX指数が、前日比で4割近くも急騰して17台となった。英の欧州連合(EU)離脱以来、最大の市場変動だ。

運用実績低迷、相次ぐ会員解約に悩むヘッジファンドにとって、この荒れ相場は、起死回生の願ってもないチャンスともいえる。まさに「干天の慈雨」なのだ。

これまでほとんど興味を示さなかった日本株・円の動向についても、執拗に質問を寄せるようになった。「総括的検証」の適当な訳語が見つからず、「ソーカツって何だ」と、その意味を聞いてくる。

そこで詳しく説明すると、「日銀の金融政策ツールは限界に達している」との認識が目立つ。財政政策にバトンタッチされるとの前提で、財政出動と日本株についての議論も見られるようになった。

そして、意見が大きく分かれるのが、米利上げ時期、その結果としてのドル相場の見方だ。

ヘッジファンドの間でもハト派、タカ派に割れている。利上げが後手にまわることのリスクと、利上げを早まるリスクがてんびんにかけられ、延々と議論が続く。

さらに、米連邦準備理事会(FRB)高官発言を信じられるか否かについても、意見の相違が鮮明だ。「FRBには逆らうな」として、素直にFRB高官たちの利上げ容認論を受け入れる見方。いっぽうで「FRBは市場とのコミュニケーションに失敗」として、利上げへの道はいまだ遠しとの読み。ほぼ真っ二つに分かれている。

なお、テールリスクとして、クリントン氏の健康問題も急浮上してきた。

円相場のターゲットレンジも、円高・ドル安派は95円を見込むが、円安・ドル高派は108円程度と読む。米連邦公開市場委員会(FOMC)、日銀金融政策決定会合をはさみ、少なくとも3円、場合によっては5円程度の振れを覚悟せねばなるまい。

円安なら日本株高という「市況の法則」もいまだに強く意識されている。

わずか0.25%の利上げの有無だが、超低金利時代の0.25%は、ずっしり重い。短期金利の指標であるフェデラルファンド金利(FF金利)が5~10%時代の0.25%と比較しても、インパクトが違う。おカネをタダ同然で借りることができて当たり前の時代に育ったトレーダーにしてみれば、資金調達コスト0.25%のハンディ増は厳しい。低イールド(利回り)模索の時代に0.25%稼ぐことが、どれだけ大変なことか。しかも、ウォール街最前線の現役ディーラーの多くは「利上げをほとんど知らない世代」だ。

9日のVIX指数の急騰は、彼らの不安感を映す事象といえよう。9月の嵐を予感させる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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