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自己否定克服し4位 幅跳び中西「自分認められた」

2016/9/10 11:27
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陸上の女子走り幅跳び(切断などT44)で金メダルも期待された義足のジャンパー、中西麻耶(うちのう整形外科)。9日の競技で5メートル42の4位に終わったが、引退した身からの復活に「またこの舞台に立てるとは思わなかった」と穏やかな笑みを浮かべた。

競技活動資金に困り、ロンドン・パラリンピックを前にした2012年、セミヌードカレンダーを発売した。義足姿の写真が話題となるものの、激しいバッシングも受ける。その影響もあって心の病になったことを中西は公表している。

陸上女子走り幅跳び中西の跳躍=寺沢将幸撮影

陸上女子走り幅跳び中西の跳躍=寺沢将幸撮影

その状態で臨んだロンドンでは4メートル79で最下位の8位。引退した。「芋虫みたいになって外出せず、人にも会えず、食べ物も吐いて、生きることを拒否した」。自己否定の固まりだった。

だが、ロンドン前まで活動拠点にしていた米国サンディエゴの五輪トレーニングセンターから誘いを受けて渡米した際、陸上仲間から言われた。「陸上が好きだから悩むのに、なんで陸上を手放すの? 自分は陸上が好きだと認めてあげて」

「この言葉がすごく心にしみた」と復帰を決意。13年から再び大会に出始めると記録を毎年伸ばした。今年5月にはアジア新記録の5メートル51。当時の世界記録まであと23センチに迫る。

優勝候補の一角として臨んだリオ。1本目ファウルの後、記録を残すためにスタート地点を少し下げた2本目が5メートル38。この時点で3位につけたが、問題は3本目だ。

3カ月前に助走1歩目の踏み出しを、それまでの義足の右足側から健足の左足側に、歩数も19歩から18歩に変えていた。だが3本目は「ふとした時に前のリズムが降りてきちゃうことがあって」無意識のうちに右足で踏み出してしまった。踏み切り板を大きく踏み越すファウル。

今春まで師事していた、地元・大分で中高生を教えるコーチが学校の仕事が忙しくなって離れ、コーチ不在で臨んでいたため、その「致命的なミス」に気づく人がいなかった。助走が崩れ4、5本目も記録を伸ばせない。

だが最後の跳躍。リオ前に再び訪れた米国で「自分の走りさえ信じてやればいい」との米国人コーチの言葉を思い出した。スタート位置を戻して「自分の感覚を信じて」跳んだら、自己記録にあと9センチ。銅メダルまで15センチ足りなかったが、中西は「自分には修正能力があると、自分自身を認めてあげることができた。次の4年間が楽しくなりそうです」。

4年前の姿はどこにもない。自己否定から自己肯定へ。南米の地は、中西というアスリートにとって新たなターニングポイントになったようだ。

目指すは健常者にひけをとらない6メートルジャンプ。必ず東京の大観衆の前で跳んでみせる。(摂待卓)

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