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崖っぷちの時こそ信じろ 「誰かが必ず見ている」

グラウンドに涼風が吹くようになり、チーム内の雰囲気も一気に秋めいてきたと感じます。来季のチーム構想から外れ、戦力外を告げられる選手も出てくる季節が到来しました。崖っぷちにいる選手にとっては心が揺れ動く時期ですが、こうしたときこそ「誰かが必ず見てくれている」と信じ、目の前のプレーに集中するしかないのです。

来季も見据える中、伊藤(左)は本職の捕手でなく一塁を守る機会も出てきた

2軍には、これから上にはい上がろうとする育ち盛りの若手もいれば、プロ入りから数年を経た中堅もいます。年齢的に微妙な立場となった選手からすれば「来季はどうなるんだろう」と先のことを考えて思い悩むのは、やむを得ないことなのかもしれません。何しろ、戦力外になる経験などしたことのない選手がほとんどなのですから。

ですが、あれこれと思いを巡らせたところで過去は取り戻せないし、事態は好転しないのです。明日は何が起こるか誰にも分からないぞと思って、ユニホームをまとっている以上はその日の野球に全力をかけるしかないのです。私自身、そのような考えを持つに至ったのには、米大リーグでのプレー経験が大きく影響しています。

決して手を抜かぬ重要性、大リーグで実感

2002年に渡米して、初めて所属したカージナルスでは当初3年契約を結びましたが、その後は1年ごとに契約を更新してプレーしました。米国でプレーする選手は基本的に1年契約であることが多く、毎年のようにフリーエージェント(FA)となる選手がいます。言い換えれば、毎年クビになっているわけです。私もカージナルス、フィリーズ、カブス、日本球界に復帰してからのオリックスも含めると、4回はクビになりました。

何度クビになる野球人生なんだろうと思いつつ、その都度、別の球団が契約をしてくれたのは、自分自身に良い意味での危機感があったからだと思います。新たな契約の場ではよく「ずっと見てきたよ」という言葉をかけられました。マイナー暮らしをしたり、代走や守備固めなどで出場機会が限られたりしても「一瞬たりとも手を抜いてはいけない」と強く実感したものです。日の目を見なくても、とにかく精いっぱいやるしかない。その信念を持ち続けた者に、野球を続ける権利が与えられるのだと思います。

2軍の指導者として初めてシーズン終盤の時期を迎えた今、思い悩んでいるのは選手たちの起用法です。チームを去っていく選手にしても、退団即引退となるわけではなく、トライアウトなどに挑戦して現役続行の道を模索していくはずです。私自身、何球団も渡り歩いた身ですから、なんとかその選手たちの手助けをしたい。彼らの調子を維持させつつ、若手を積極的に鍛え上げる選手起用とは――。この難題と向き合う日々です。

一方、最下位に苦しむ1軍では、福良淳一監督の下、そろそろ来季を見据えた戦いが始まっています。新たなチーム構想を練り直す中で、本職とは違ったポジションで試される選手もいます。伊藤光捕手が一塁手で、ルーキーの大城滉二遊撃手が中堅手や三塁手でスタメン出場する機会も出てきました。

大城は打撃もアピールポイント。どのポジションなら彼を生かせるか見極めている段階だ

守備位置が変わることの大きな効用

伊藤捕手にとっては、3年目と若い若月健矢選手に正捕手の座を明け渡したようで、悔しいと思うかもしれません。ですが、一塁の守備位置から野球を見てみると、今まで捕手の目線でしか見ていなかった野球とは違った世界が見えてくることもあるでしょう。バッテリーの呼吸の合わせ方、打者との駆け引きなどを違った角度から勉強することで、捕手に戻ったときに新たに生かせることもあるはずです。

俊足、強肩の大城選手は打撃もアピールポイントで、どのポジションで起用すれば彼の身体能力を生かせ、チームにフィットするのかを見極めている段階だと思います。レギュラーの安達了一選手が休養した時には遊撃を任されることも出てくるでしょう。外野手の動きを学び、内野手にしてほしいことを体感として知っておくことは無駄ではありません。ポジション取りや返球のカットに入る位置、内外野の声の連携など、内野手としての技術向上にも役立てられるからです。

チームは発展途上にあり、複数ポジションで使われる選手には、大きなチャンスが転がっていると前向きに受け止めてほしいと思っています。任されたポジションをものにできれば、選手自身の幅が広がりますし、チームにも層の厚みという効果をもたらします。野心を抱いてプレーすることが競争の激化を呼び込み、来季の希望へとつながります。

(オリックス・バファローズ2軍監督)

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