2017年12月17日(日)

前代未聞のボット“逮捕” 遅れる法の対応

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2016/9/9 6:30
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VentureBeat

 警察がボットを逮捕し、数カ月間拘留して取り調べた後に釈放する事態を想像してほしい。これは決してSFブログのシナリオではなく、昨年にスイスで実際に起きた出来事だ。

■闇の取引で活躍

チャットボットの登場は新しい法的問題を引き起こす(C)Shutterstock.com/BortN66

チャットボットの登場は新しい法的問題を引き起こす(C)Shutterstock.com/BortN66

 世界を股に掛けたスイスのボットとそのオーナーはどんな罪に問われたのか。ヒントは「ランダム・ダークネット・ショッパー(RDS)」というボットの名前にある。芸術家カップルがつくったRDSは、「闇サイト」(ダークウェブ、ダークネット、ディープウェブ、ダークネットマーケットともいう)と呼ばれるいかがわしい場所で違法な商品を購入していた。しかも、購入品を展示するため、チューリヒに住むオーナーに送っていた。

 ボットに全ての罪があるわけではなかった。ボットは毎週、ビットコインで100ドル相当を闇サイトで使うように事前にプログラムされていたのだ。RDSは与えられた仕事をしっかりこなし、あらゆるタイプの偽造品や、(違法ではないにしろ)反道徳的な商品を送った。

 スイスのザンクトガレンにある有名なアートギャラリー「クンストハレ」は、この怪しい手段で入手した品を一般に展示し、カルメン・ワイスコフ氏とドマゴイ・Smoljo氏が手掛けたこのパフォーマンスを活動家団体「!Mediengruppe Bitnik」による芸術という名の「問題提起」だと持ち上げた。

 これは成功を収めた――ただし、ギャラリーの経営者と芸術家が展示の一環として合成麻薬「エクスタシー」の包みを壁に打ち付けるに至っては、警察はもはや冗談では済まないと考えるようになった。警察はボットを逮捕し、エクスタシーを押収。2人のスイス人芸術家は次の展開を恐れ、自分のスタジオに逃げ込んだ。

■数カ月で釈放

 この事件は海外でも報道され、国内で議論を巻き起こした。スイス当局が数カ月後、ボットを釈放し、裏で糸を引いていたカップルの行為にはパフォーマンスアートと啓蒙という大義があったと認めたことで、事態は一件落着した。芸術家はその後発表した声明で「ボットは大丈夫で、ビットコインの残高もある。だからといって、スイスのアートスペースでエクスタシーを使うのが合法になったわけではない」と述べた。

 芸術家はボット利用の倫理や法的責任、「社会でのコントロールの問題」について提起するために、世界のメディアに取り上げてもらうという目的を果たした。この論争を受け、彼らは再びRDSをリリースすることにした。ただし、今回は「ボット」とカップルは英国に移った。

 ボットはまたしても闇サイトでクリスマスショッピングに励んだ。今回はボットの反道徳な行動を「ライブ」展示していたロンドンのギャラリーに、いかがわしい収穫品を送るようプログラムされた。

 不思議なことに、海外メディアは2015年末には英国での展示について相次いで報じていたが、今年に入るとぴたりとやんだ。

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