2018年1月18日(木)

芦屋ブランド、ジュエリーに日本の四季投影

2016/9/1 6:30
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 兵庫県芦屋発のジュエリー時計が今、世界の高級宝石業界で話題を呼んでいる。スイス・バーゼルで今年3月開かれた世界最大の時計・宝飾品の見本市「バーゼル・フェア」で、セイコーウオッチが披露した1本、税別4000万円の時計だ。日本の桜をイメージし、天然のピンクダイヤモンドをはじめ約150個のダイヤが敷きつめられている。ダイヤ同士の間隔は0.05ミリで整然と並ぶ。芸術的な装飾・デザインを手掛けたのは、兵庫県芦屋市の小さなジュエリー工房ギメルトレーディング。世界のジュエリーファンがほれ込む匠の技に迫る。

 ギメルはデザインを手掛ける穐原かおる社長が1991年に立ち上げた。もっとも、時計のデザインを手掛けたのは今回が初めてで、通常はブローチやピアス、指輪などを得意とする。銀座和光(東京・中央)や宝飾店など限られた店舗にのみ置かれるほか、百貨店の外商ルートで扱われる。価格は安くても数十万円、1億円を超える商品もある。売れ筋は100万円台~300万円台。

ギメルが装飾を手掛けたジュエリー時計=セイコーウオッチ提供

ギメルが装飾を手掛けたジュエリー時計=セイコーウオッチ提供

 世界を魅了する究極美を生み出す工房は、JR芦屋駅から車で15分ほどの六甲山の山道の中腹にある。本社を兼ねた建物から六甲山が見渡せ、その先には大阪湾や神戸の町並みが広がる。ほとんどが手のひらサイズの小さなジュエリーには、こうした自然美が凝縮されている。デザインは社長自らが描く。春の桜、紅葉で色づく葉、冬の雪景色といった移り変わる光景がモチーフになる。「西洋で生まれた宝石の装飾技術を使いながら、日本の美を表現している」(穐原社長)。こうした四季折々の美を、海外を含めた愛好家が“独創的”とあこがれる。

 もちろん評価されるのはデザインだけでなく、それをかたちにする技術力にもある。輝きを放つ商品をよくみると、大きさが異なるダイヤモンドが隙間なく敷き詰められている。ダイヤの大きさは1カラット以下の1ミリから5ミリ程度。職人はピンセットで丁寧にダイヤを置いていく。現在、職人は20人の少数精鋭。出来栄えに納得がいかなければ、一から作り直す徹底ぶりだ。長くなると2~3カ月ほどかける。

 裏さえも美しく仕上がるようこだわる。商品をひっくり返すと敷きつめられるダイヤモンドの大きさにあわせて蜂の巣状の構造になっている。肌や衣類への装着感にも気配りしており、職人らがやすりをかける。金属の工具で大まかな作業を進めたうえで、最終的には木綿の糸を使って完成させる。金属の粗さをなくし、糸が切れるまで地金の穴を一つ一つ磨き上げるという。この作業だけでも少なくとも3日がかりだ。ギメルは分業でなく、各職人がすべての作業を1人で担当する。

 ダイヤモンドを供給する資源大手さえ魅了する。ギメルが主に使う天然のカラーダイヤは放射線や窒素の含有量、結晶の構造などの変化で色がつくとされ、無色透明のダイヤよりも入手しにくい。そんななかで、最高品質の素材を仕入れている。ダイヤモンドを産出する豪アーガイル鉱山を持つ英豪資源大手リオ・ティントの幹部がギメルの商品を見て、「素材が最も美しく輝くかたちを実現している」と一目を置く。セイコーの時計で使われたピンクダイヤモンドは、ダイヤ全体の1%しか存在しないという。これを最高品質のものをよりすぐり、惜しげもなく使える調達力も強みとなる。

 大手競売会社「サザビーズ」や「クリスティーズ」の目利きらの間では、「100年後も価値を保ち続ける」とお墨付きもすでにある。100年を超える欧州の老舗ブランドがひしめく宝石業界で、創業から四半世紀のギメルはまだ駆け出し。輝きにさらに磨きをかける。

(映像報道部 鎌田倫子)

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