"ロックヒロイン"LiSAが考える「アニソンとは」
デビューから5年。ソリッドでポップ、ときにキュートに変化する変幻自在なロックサウンドに、透き通る高音ボイスをパワフルに響かせ、"ロックヒロイン"LiSAは、彼女にしか歩けない道を進む。

2010年にテレビアニメ『Angel Beats!』で劇中バンドの歌唱パートを担当して注目を集め、翌年LiSAとしてソロデビュー。テレビアニメ『Fate/Zero』のオープニングテーマに使用された『oath sign』は、1stシングルにしてゴールドディスク(※)に認定されるなど、その登場は鮮烈なものとなった。
2015年は、香港やシンガポールなど5カ国を回るアジアツアーで計5000人以上を動員。アニソン最大の夏フェス「アニメロサマーライブ」(以下、アニサマ)で初日のトリを務め、アニソン界の顔となると同時に、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」などにも出演。アヴリル・ラヴィーンやGREEN DAYに影響を受けたというその音楽で多くのロックファンの心をつかみ"ロックヒロイン"と称されるなど、アーティスト活動の幅を広げた。
新曲『Brave Freak Out』(8月24日発売)は、約1年ぶりのアニメタイアップ。そんな彼女に「アニソンとは何か」を質問した。
曲に2重の広がりをもたらす
自分が届けたい音楽やメッセージを、作品を通して多くの人に届けてもらえるもの。LiSAの曲でもあるけど作品世界のものでもあって、曲に2重の広がりをもたらしてくれるものだと思いますね。
一昨年くらいまでは、アニソンの世界に入らせていただくという気持ちでしたが、去年「アニサマ」でトリをやらせてもらったことで、自分がアニソンをちゃんと背負っていこうという覚悟ができました。これまであの大きなプレッシャーのかかるステージのトリを務めてきた先輩方、水樹奈々さん、奥井雅美さん……みなさんずっと「アニソンとは」と聞かれてきた方たちだと思うんですが、新しい道を切り開いてきた。私もできるんだったらずっと後輩でいたい気持ちもありますが(笑)、自分にしか開けない扉もあるなと感じて。それがまずはロッキンやサマソニだったりするんですが、突破口として1つ開いた後に、誰かがそこの道を歩いていけるような何かができるんだとしたら、それをやらせてもらえるのがすごくありがたいですね。
「初めはアニソンと自分の音楽が完全に分裂していた」と話す。
アニメに関わるときは自分が真っ白になって、その世界に染まることが誠意だと思っていたんです。だけど徐々に、例えばピンク色の今の私がアニソンでできることって何だろうって、全ての音楽をLiSAとして1つで考られるように。新曲の『Brave Freak Out』は、『クオリディア・コード』という作品と、アニソンで私が求められているもの、そして1年かけていろいろな場所で成長した私が詰まった楽曲です。


アニソンでLiSAが求められているものを具体的に聞くと、「声が高い」「ピッチが早い」「音が多くて派手」との返答。本人は、「たまたま自分が持っているものがちょうど求められていて、使える場所があったな、ということだと思います。個人的には高い声よりしゃがれた声が好きですし(笑)」と言うが、今アニソンを歌う多くの女性アーティストにも共通する3つのトピックは、彼女の登場により印象づけられ、時流となった。では、ピンク色のアーティストLiSAが音楽で伝えたいこと、そして、デビュー5周年を迎え、今描く「これからのこと」とは。
伝えたいことは1つで、みんなが今を、自分自身を愛せるように思ってくれたらいいなって。未来を楽観視してないけど「今日はいい日だったな」、今不安でも大丈夫だよって言ってあげられるような歌を作り続けたい。
LiSAッ子(LiSAのファンの愛称)たちの可能性を感じてるんです。東京ドームとか世界ツアーとか、やれることはやりたいですね。そうなったらそれまで興味のなかった人にも「LiSA知らないとマズい」と思ってもらえるでしょ(笑)。3年前は「アニソンでしょ?」って思われていたことも、最近は「こっち来る?」ってドアを開けて受け入れてくれる方たちが増えました。きっと開ける方も勇気が必要だったはずで、だから恐がりな私も一歩踏み出せる。いきなりここまで来たわけじゃなくて、ミッションを1つずつクリアして、ライブ会場も段階を踏んで大きくし、秋には横浜アリーナでできる。これからもこうやって重ねていけたらと思います。
ドリカムさんやミスチルさんのライブに行くと、アーティストとファンが曲を通して一緒に年を重ねて、一体感があるじゃないですか。私とLiSAッ子たちにも、そんな未来があればうれしいですね。
※…日本レコード協会規定により、10万枚以上をセールスした楽曲に贈られる賞。
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2016年9月号の記事を再構成]
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