2018年8月16日(木)

PL保険も必要 「自動車保険」自動運転でどう変わる
自動運転が作る未来(3)

自動運転
(1/4ページ)
2016/9/6 6:30
保存
共有
印刷
その他

日経BPクリーンテック研究所

 「完全自動運転」の時代が到来すると、交通事故が激減して損害保険で最大のウェイトを占める自動車保険の価値がなくなり、損保の売り上げが減少するという指摘がある。ただし、世の中のほとんどの自動車が完全自動運転車になるには相当時間がかかりそうだ。

自動運転車の試作車の例(写真:日産自動車)

自動運転車の試作車の例(写真:日産自動車)

 日本全体の自動車総数は約8000万台、過去5年間の国内新車販売台数は年間470万~570万台で推移している。日本全体の自動車が完全自動運転車に置き換わるには、完全自動運転車が発売されてから少なくとも15年程度はかかる計算になる。一般自動車に自動運転機能を組み込む追加機構が登場する可能性はあるものの、これからしばらくは自動運転車と一般自動車が混在・共存することになる。

 自動運転車は交通事故の発生頻度を引き下げる効果が期待できる。しかし、その仕組みを実現するために新たな機能・機構を多数備えることになるため、新たな故障リスクも生まれる。高額の電子部品を多数搭載するため、器物損傷時の被害額が大きくなりかねないという懸念もある。

 加えて、自動運転車と一般自動車が共存することに伴う新たなリスクも生じるだろう。これらを考えると、自動車事故に備える損害保険の有用性は、しばらくは変わらないのかもしれない。

■まずは実証実験向け保険でスタート

 2016年8月現在、国内の損保会社は一般個人を対象とした自動運転車向けの自動車保険を提供していない。ただ、準備は進めている。その象徴ともいえる商品が、「自動走行の公道実証実験」でのリスクを補償する保険商品だ。

 2015年12月に三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が共同発表したのを皮切りに、2016年3月には東京海上日動火災保険が、2016年6月には損害保険ジャパン日本興亜がそれぞれ商品提供を発表している。各社とも専用保険を提供するほか、実証実験の安全性を高めるためのコンサルティングサービスも提供する。

 実証実験向け商品の開発目的は大きく二つある。第一は、国が目指す「世界一安全で円滑な道路交通社会」の実現を保険事業の立場から後押しすること。損保各社は、この目標を掲げた「官民ITS構想・ロードマップ2016」(2016年5月策定)の内容を踏まえ、ロードマップに記された自動走行システムの公道における実証実験を想定して保険商品を開発している。

 「自動運転車が実用化されることは、高齢者など移動弱者を支援することにつながる。国が積極的に取り組んでいることでもあり、我々の立場でできることをしていきたい」(三井住友海上火災保険 自動車保険部商品企画チーム兼商品本部次世代開発推進チームの坂下秀行課長)

 自動走行の公道における実証実験の実施に当たっては、警察庁からもガイドラインが出ている。2016年5月に公開された「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」がそれだ。

 この中に「実施主体は、自動車損害賠償責任保険に加え、任意保険に加入するなどして、適切な賠償能力を確保するべきである」との記述がある。実証実験の実施主体は、保険加入を求められているのだ。「大学やベンチャー企業など、予算面で制約の多い研究機関の活動を支援するために商品化した。自動運転の実証実験はコストがかかる。しかも機器が高額なので事故が起こったときの経済的損失は大きい。実証実験向けの保険があれば経済的な負担を小さくできる」(東京海上日動火災保険 営業企画部マーケティング室グローバルマーケティンググループ担当課長の沓沢一晃氏)。

 第二の目的は、将来の自動運転時代に即した保険商品を開発するためのノウハウを蓄積することだ。自動運転車は、カメラ、GPS(全地球測位システム)、各種センサーのほか、各種の制御用マイコンを多数備える高度で複雑なIT(情報技術)システムである。

 搭載する要素技術・部品が増えれば、それだけリスクも増える。システムを構成する個々の電子部品の破損や機能障害、処理連携エラーが事故の原因になりかねないからだ。しかも、それらのリスクがどの程度の確率で発生するのか、そしてどの程度の損失に結びつくのかといった保険設計に欠かせない基礎データもない。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報