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好奇心 強さの源泉 パラ競泳(視覚障害)木村敬一

体で知る成果に夢中

7月17日、横浜国際プールで行われたジャパンパラ水泳で、最も客席を沸かせたのが木村敬一(東京ガス)だった。ただし「快泳」ではなく、「怪泳」によって。

男子100メートル平泳ぎで今季世界ランク2位の木村が3レーンで飛び込み浮き上がると、左隣の4レーンに入ってしまった。コーチが懸命に「右、右」と叫ぶが、これをターン後の方向の指示だと勘違い、折り返しでさらに隣の5レーンに。

木村は全盲のスイマーだ。ほとんど視力がない視覚障害者が競う「11」というクラスで戦う。リオデジャネイロ・パラリンピックを控えた最後の試合での2度の脱線による失格にも、「そういうこともありますわ」とみじんも暗さを感じさせない笑顔でコメントした。水泳を心の底から楽しむ心根が伝わってくる。

木村はリオで金メダル獲得を目指す

1歳半で失明、小学4年で水泳を始めた。「障害を持つ仲間の中で、自分はこういうことができるというものに出合えてうれしかった」。上京して筑波大学付属視覚特別支援学校中学部に入り、現日本代表コーチで同校水泳部を創設した寺西真人に入部を誘われた。

寺西は防火水槽を改造した12メートルプールで生徒を指導、多くのパラリンピアンを育てた名伯楽だ。今回、ターンやゴールのタイミングを、木村の頭などを特殊な棒でたたいて知らせるタッパーという役割も担う。

高3で初めて臨んだ北京パラを木村は「よくわからないまま、気がついたら終わっていた」ものの、すべての種目で自己ベスト。悔しさはなかった。ロンドン大会では「どうしてもメダルをという思いで乗り込んで」100メートル平泳ぎで銀、100メートルバタフライで銅。

そして今回のリオは当然のように「金メダル獲得を目指す」。100メートルバタフライでは今季世界ランク1位、50メートルと100メートル自由形、200メートル個人メドレーでも3位以内に入っており、周囲の期待は高まる。

現在、木村を指導するコーチの野口智博は、全盲ゆえにコースロープにぶつかって減速する泳ぎは仕方なしとして、ならばロスする分も含めたエネルギーをためられるようにと、肉体改造を命じた。1日5食。ロンドン大会時に63キロだった体重は70キロ弱に。上半身のたくましさは見違えるほど。本人も「高強度のトレーニングをこなせている」と手応えを語る。

野口の課す様々なメニューをきついながらも興味津々でこなす風情が木村にはある。「トレーニングの成果が活字体ではなく、自分の体を使って知れる面白さがある」。目ではなく、体で情報を吸収し、血肉化しているということだろう。

「リオは楽しみですか?」と問うと、「いや、心配っすよ」。そう答えながらも、満面の笑み。楽しむ準備はできている。=敬称略

(摂待卓)

 9月7日から始まるリオ・パラリンピック。活躍が期待される日本のアスリートを紹介する。

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