投資信託の主流 キーワードは「ロングセラー」に
QUICK資産運用研究所 清家 武

投信調査隊
2016/8/31 5:40
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これまでの投資信託市場は新陳代謝が活発で、運用期間の長いファンドよりも目新しい新規ファンドが注目される傾向があった。新規ファンドが次々と設定されてきたことで、直近10年間でファンド数は倍増し、約6000本まで拡大した。

最近は金融庁の指導のもとに、金融機関が預かり資産を重視した資産管理型営業を意識するようになり、ファンドの中長期投資が浸透しつつある。その結果、10年以上の運用実績があるファンド、いわゆる「ロングセラーファンド」が見直されて資金流入額が伸びている。

ロングセラーファンドは長い運用期間の中で収益調整金などの分配可能原資を蓄積してきたことで高分配が可能になり、海外不動産投資信託(REIT)型ファンドを中心に人気化したという面もある。

■運用期間の長さは歴史的な価値

2016年7月末時点で純資産総額が50億円以上あるファンドについて、新規設定日(運用開始日)と純資産の規模の関係を調べてみた(グラフA)。近年に新規設定されたファンドと比べて、1998年ごろや03年から05年ごろに新規設定された運用実績の長いファンドの純資産総額が大きいことが分かる。

10年以上の運用実績があるファンドは、サブプライムローン問題、リーマン・ショック、中国経済危機などの相場下落局面を乗り越えてきたということで、個人投資家に安心感を与えているという側面もあるようだ。

欧米の投信業界では「サバイバル・バイアス」(Survival Bias、生存者のみを対象とした偏り)という言葉が使われるが、長期間生き残っているファンドの運用成績は、償還し消えていったファンドより良いという見方もある。

またファンドの運用期間が長ければ、過去の相場局面にどのような運用をしてきたか、基準価格がどのように変動したかを開示書類で確認できる。高級ブランド品に歴史的な価値があるように、ファンドの「運用期間の長さ」はファンドの歴史的な価値ともいえる。

■大型ファンドの多くがロングセラー

追加型株式投信の純資産ランキングをみると、上位20ファンドの運用期間の平均は約11年10カ月になった(表B)。運用期間が10年以上のファンドは20本中17本を占めており、ロングセラーファンドが大型ファンドの主流を占めているといえる。

純資産ランキングのトップ「新光US-REITオープン(愛称:ゼウス)」、2位の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」、3位の「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」は海外REIT型ファンドであり、運用期間は12年程度と長い。高分配で人気となり、投信市場のけん引役になっている。

ランキング内で最も運用期間が長いのは「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の約18年8カ月。毎月分配型ファンドを普及させたファンドだが、先進国の金利低下により分配金が減少し資金が流出した。

ランキング内で最も運用成績が良いのは「J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」で、10年間で97.09%値上がりした。「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」などの米国REIT型ファンドも60%以上値上がりしている。

■短期的な相場動向に左右されにくく

トップ20にランクインしたロングセラーファンドの10年間騰落率の平均値は43.17%になった。リーマン・ショックなど短期的な大幅下落もあったが、その後の円安、株やREITの値上がりを背景に、ロングセラーファンドは好成績を収めたといえる。

金融資産への投資は、短期間でみると一時的な要因によって大きく価格が変動することがあるが、長期投資することで、短期的な相場の動向に左右されにくくなる傾向がある。相場の短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期的な視点で長い運用実績のあるロングセラーファンドに注目してみるのも一つの手だ。

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