2019年2月18日(月)

新しい認知症薬、エーザイが治験開始

2016/8/24 6:30
保存
共有
印刷
その他

エーザイは新型のアルツハイマー型認知症の治療薬を2020年をめどに商品化する。脳内の神経細胞の働きに直接作用し、記憶障害や精神の不安定さなどアルツハイマー特有の症状を抑える。世界的な高齢化の進展で認知症患者は増えており、製薬大手の開発競争も激しさを増している。臨床試験を急いで競合に先駆けた販売を目指し、新たな主力薬に育てる。

エーザイは主力薬だったアリセプトに代わる新薬の開発を急いでいる

エーザイは主力薬だったアリセプトに代わる新薬の開発を急いでいる

新たなアルツハイマー型認知症の治療薬は「E2027」で、このほど米国で初期段階の臨床試験を始めた。日本などでも段階的に試験を開始し、効果や副作用などを調べたうえで20年以降に日米欧での販売を目指す。

E2027は脳内で認知機能などをつかさどる「海馬」と呼ばれる部分の中にある神経細胞に直接作用するのが特徴だ。

アルツハイマーの患者は海馬の中の細胞にあるアミノ酸の一種「サイクリックGMP」が酵素によって分解され、その量が健康な人よりも20%前後少ないことが多い。E2027は対象の酵素に結びついて分解作用を阻害し、サイクリックの量が減らないようにして症状を抑える効果を持つという。

アルツハイマーに近い症状を持たせたマウスを使った実験では、海馬の細胞にあるサイクリックの量が、投与した後には健康なマウスの量にまでおおむね戻った。同社によると、人間の患者でも脳の脊髄液にあるサイクリックの量が上昇することが臨床試験で確認されており、海馬でも同様な効果があるとみている。

これまでの認知症薬は脳内の神経伝達物質に働きかけ、神経の信号を阻害されないようにして認知症の症状を抑えることが多かった。E2027は脳内の細胞に直接作用するため従来の薬とはメカニズムが異なる。そのため、単品での投与に加えて「他の薬剤との併用もしやすくなるとみており、病院などでの治療における選択肢が広くなる」(ニューロロジービジネスグループの日比滋樹室長)という。

国際アルツハイマー病協会によると、認知症は高齢化の進展に伴って患者が増え続けている。15年には世界で4700万人おり、50年には1億3500万人にまで増加すると推計。国内でも12年に462万人(厚生労働省調べ)が患っているとされ、今後も増加傾向が続くとみられる。記憶障害や判断力の低下などの中心的な症状のほか、過度の焦燥感や興奮、攻撃性、精神の不安定さなどの周辺症状も起きる。

患者には海馬など脳の様々な変化が起きることが多いとされるが、理由はよく分かっておらず、根本的な治療や予防法も確立はしていない。症状を抑え、進行を遅らせる治療薬は順次開発されており、発症の仕組みとともに効果的な治療薬の開発が期待されている。

エーザイは今年4月から10年間の中期経営計画で認知症薬を抗がん剤と並ぶ成長の両輪に位置づけた。同社の認知症薬では1997年発売の「アリセプト」がピーク時の10年3月期に3228億円を売り上げるなど、世界の医薬品市場で積み上げてきた実績がある。

同製品も特許切れによって安価な後発薬に押され、16年3月期の売上高は5分の1にまで落ち込んだ。認知症薬の分野でエーザイの代名詞ともいえるアリセプトに代わる新たな主力薬の開発が待たれている。

(企業報道部 伊藤正泰)

[日経産業新聞8月24日付]

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報