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メダル遠し…もっとタフなマラソン選手を

雨が降り、選手たちは強い日差しに苦しめられなかった。スタート時の気温は24度だから、気象条件は厳しくなかった。にもかかわらず、25キロまで5キロを15分30~40秒台で進むスローな展開になった。

それは、エチオピア勢をはじめとする有力選手がみんなそろって、大本命のキプチョゲ(ケニア)を意識しすぎたからだろう。

(手前から)佐々木、北島、石川。女子同様、入賞なしの惨敗だった=共同

みんな大本命キプチョゲを考えすぎた

4月に世界歴代2位の2時間3分5秒を出したばかりで、マラソン7戦6勝のキプチョゲを、みんながマークした。そのキプチョゲがいつペースを上げるのだろうと、先頭集団の選手はずっと考え続けたはずだ。

「いつだ」「いつだ」と考えすぎ、それが大きなストレスになり、ボディーブローのように効いてきた。頭を使い続けることで、大事な糖質を余分に使ってしまった。

スローペースなのにアベラ(エチオピア)、ケフレジギ(米国)ら有力選手が早い段階で脱落したのは、そのためだろう。何も考えず、淡々とレースを進め、勝負どころがくるのを待てば良かったのだと思う。

マラソン2戦目で銅メダルを獲得したラップ(米国)はずっとキプチョゲのすぐ後ろについていた。位置取りが良かったのでムダを省けた。

ふだんもっと速く走っているアフリカ勢にとっては、アクセルとブレーキを同時に踏み込み、エンジンをぶんぶん吹かしながら走っているようなものだった。そこで余計な力を使ってしまった。遅いなりの適切な走り方をしなければいけないのに、対応できた選手が少なかったのかもしれない。

佐々木(左)は15キロまでの位置取りは良かったが30キロまで我慢できなかった=共同

スロー展開はチャンスだったが…

入賞ラインは2時間11分49秒と低かった。このスローな展開は日本人選手にとってチャンスだったのに、女子同様、入賞なしの惨敗に終わった。佐々木悟、石川末広は15キロまではいい位置取りができていたが、これから勝負が始まるという30キロまで我慢できなかった。

今回は速さではなく、精神面も含めた強さ、タフさが求められるレースだった。暑い時期に行われる4年後の東京五輪はもっと過酷なレースになる可能性が高い。そこで結果を残すには、あらゆるストレスに耐えられる強い選手を育てるトレーニングが必要だ。

2選手が入賞した米国の取り組みは参考になる。ラップらはマラソントレーニングだけでなく、負荷の高い無酸素系のトレーニングもこなしている。レースを終えた後、スピードトレーニングをするなど過酷なことに取り組んでいる。

4年後までにケニア、エチオピア勢のように楽に2時間5分を切る選手を育てるのは現実的ではない。日本の現状を考えると、いきなり世界のスタンダードを追うより、日本独自の強化策を立てるべきだろう。

まずは、コンスタントに2時間8分台で走れる選手をたくさんつくるべきだと思う。2時間8分台で走る潜在能力がある選手はたくさんいる。学生でマラソンに挑む選手も増えている。そこからワンランク上にいく選手が出てくるはずだ。

36位だった石川(左)。悪条件で強さを発揮できる選手の育成が大切だ=共同

日本勢、食生活など根本から改善を

東京五輪でメダルを取るには、夏にいかに冬のレースのようなクオリティーを出せるかがカギになる。それを念頭に置くと、悪条件で強さを発揮できる選手を育てなくてはならない。

ほとんどの実業団が夏場は、より涼しいところで合宿を張っているが、そればかりではなく、厳しい条件下でのトレーニングも必要だろう。暑い中で100%の力を出しきれるようにしなければならない。

ケニア勢は高地で、かつて瀬古利彦さんや中山竹通さんがしていたような高負荷のトレーニングを重ねている。高地で40キロ走を2時間6分~7分でこなしていると聞く。世界のトップと勝負するなら、そういうことが求められるが、いまの日本人選手にそれはできない。

若い選手がひとむかし前のような厳しい練習ができなくなっている。厳しい練習をするとダメージが大きい。食生活の見直し、フィジカルトレーニングの本格的な導入などを考えないとタフな選手はつくれないのかもしれない。

94位だった北島。今の日本選手は自分たちでペースを作れない。大会のあり方も考え直す時期だろう=共同

いまの日本選手は自分たちでペースをつくっていけない。記録会で出る好記録はほとんどがペースメーカーに頼ったものだ。勝負強さを養うには、ボストンマラソンのようにペースメーカーのいない大会も必要になる。米国ではそういう大会を増やしている。

確実に2時間8分台で走る設定が必要

国内大会のあり方も考え直すべきときがきている。東京マラソンは毎年、2時間5分台を切るような世界のトップクラスを呼んでいる。そこで「世界」にチャレンジさせるのもいいが、確実に2時間8分台で走らせる設定の大会があってもいいと思う。選手を育てるためにはどんな大会が必要なのかを考えていくべきだろう。

東京五輪のコースが決まったら、そこで繰り返し大会を催すことができないものだろうか。東京で公道を閉鎖して何度も大会を催すのが難しいのは承知しているが、地の利を生かしてメダルを目指すには、そのくらいのことを国を挙げてやる必要があるのではないか。

(GMOアスリーツ監督)

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