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若者のビジネス感覚磨くクラブに 本田圭佑の思い

SVホルン CEO神田康範

オーストリア2部リーグ(エアステリーガ)の戦いで開幕から3連敗した後、12日の第4節ブラウバイス・リンツ戦でSVホルンは今季初勝利を挙げることができました。FW榊翔太、MF矢島倫太郎、DFハーフナー・ニッキの3選手も先発で頑張り、我々にとっては2部昇格後、うれしいホーム初勝利でもありました。

7月22日の開幕戦で当たったのはFCリフェリングというレッドブル・ザルツブルクのセカンドチームでした。ザルツブルクは1部のブンデスリーガを3連覇中の強豪で、日本では五輪代表の南野拓実選手が所属するクラブとして有名かもしれません。

連敗中でもチームは一歩ずつ前進

残念ながら第6節はホームで0-1と競り負けた

セカンドチームといっても力は半端ない。チームには将来性たっぷりの新鋭がいれば、本来は1軍の力がありながら故障などで戦列を離れた選手が調整を兼ねてこちらの試合に出てくることもあります。そこに0-1の黒星はまずまずだと思いました。特に硬さがほぐれた後半は十分に自分たちの力を示せたように思いました。

連敗中も実はそれほどネガティブにはなっていませんでした。試合内容は徐々によくなり、収穫と呼べるものがあったからです。チームの雰囲気も沈んでおらず、一歩一歩、チームは前に進んでいる、きっかけ一つで勢いがつく、という手応えを感じていました。

残念ながら第6節はホームで0-1と競り負けました。現在1勝5敗の9位と苦戦は続きますが、これからも上を向いて戦い続けたいと思っています。

さて、8月の日本は、リオデジャネイロ五輪一色に塗りつぶされていたようですね。日本のメダルラッシュを私も喜んでいます。そんな中でサッカーの日本代表が1勝1分け1敗に終わり、決勝トーナメントに進めなかったのは残念でした。

その結果に、リオ五輪に出ることになっていたFW久保裕也選手が大会直前になって、所属先のヤングボーイズ(スイス)の意向に従い、参加を見送ったことがどれくらい影響したのかは私にはわかりません。日本では久保を送り出さなかったヤングボーイズに対して「ひどい」という意見もあるそうですね。「出す」と言っていたのを急に「出さない」では話が違うと。

ヤングボーイズの「ひょう変」あり得る

「チームは連敗中もそれほどネガティブにはなっていない」と神田氏

日本サッカー協会とヤングボーイズの間でどんなやり取りがあったのか、知るよしもありませんが、欧州でクラブ経営に携わる人間の一人として、ヤングボーイズのひょう変?は、あり得る話という気がします。

そもそも基本的な構図として、所属選手を代表に喜んで送り出すクラブはないといっていいくらいです。「断れるものなら断りたい」と全クラブが思っているのではないでしょうか。一番怖いのは選手が代表戦でケガをして帰ってくるリスクでしょう。

国際Aマッチの場合、国際サッカー連盟(FIFA)はルールを設けて、選手を代表戦に向けてリリースすることを全クラブに義務付けています。それは、そういう強制的なルールがないと、どこも選手を出そうとはしないことを逆に証明しています。五輪はそのルールの適用外なのですから、今回のヤングボーイズのように攻撃陣に故障者が続出して人手不足に陥ったら、選手の提供を拒むことは大いに起こりうるのです。

もちろん、代表に選手を送り出すことにメリットもあります。代表になることは、その選手だけでなくクラブのステータスもぐっと押し上げてくれる。それはスポンサー集めであるとか、観戦者の増加につながって集金を助けてくれます。クラブの側は常にそういうメリットとデメリットを測りながら冷静に着地点を見極めているわけです。そこに情緒的な要素が入り込む余地はほとんどないといっていいでしょう。

ですから、五輪への選手の出し渋りをFIFAや各国のサッカー協会が本当に心配するのであれば、五輪をワールドカップ(W杯)やユーロ(欧州選手権)、コパ・アメリカ(南米選手権)、アジアカップなどと同様に扱うように制度化する必要があると思います。そういうルールを設けない限り、五輪のたびに同じことが世界のあちこちで繰り返されることでしょう。

オーナーの本田は突然、クラブにやってくることがある

サッカーシーズン、悩ましい長期休暇

夏に始まる欧州のサッカーシーズンはスタートを切ったばかりです。開幕への備え、開幕後のフォローも含めてやることはいっぱいあるのですが、悩ましいのがバケーションです。シーズンでも一、二を争う大切な時期、忙しい時期にクラブの現地スタッフが休みでいなくなってしまうのです。

SVホルンの職員は私以外に7人います。現地の人間が3人、日本人の職員は4人の混成部隊です。それでも足りなくて、スタッフをさらに増やそうかと思っているのですが、できることなら日本人の手を借りたいと思ってしまいます。

オーストリアでは労働者の権利はしっかり守られています。労働時間は週40時間と定められ、休日はカレンダーどおりにプラスして5週間の長期休暇を確保できます。SVホルンでも訴訟のリスクを抱え込むのはバカらしいのでしっかり法律を順守しています。そんなところで争う気は毛頭ないのですが、シーズン前の準備期間とか開幕後の最も忙しい時期に「5週間休みます」と現地スタッフに言われ、本当に抜けられるのはかなりきついです。今年も2人に繁忙期に抜けられました。日本なら「2人同時はきついから、お互いに休みをずらしてよ」とお願いするところですが……。

ナイトゲームがあると試合後、いろいろな後片付けがあって、どうしても就業時間が延びます。それも細大漏らさずしっかりカウントしています。各人がエクセルなんかで手製のタイムカードをつくっていて「私は先週何時間の超過勤務がありました。その分、何曜日は午後2時からの出社にします」などと申告してきます。サービス残業などもってのほか。絶対にありえません。

インターン積極採用、オーナーの意向

SVホルンのオーナーである本田圭佑は突然、クラブにやってくることがあります。この間も米国でプレシーズンマッチに出ていると思ったら「急に休みが2日できた」といって、ドイツのフランクフルト経由で視察にきました。その後、ACミランの練習に合流するためにミランへ。現地スタッフの目には「クレージー」としか映らない働き方かもしれません。

こちらでは採用面接をしても必ず「週40時間労働と5週間の休み」を向こうから念を押されます。私としては「大丈夫です」としか答えようがありません。それだけにインターンを希望してホルンまでやってくる日本の若者たちに「仕事は何でも、いくらでもやります」と言われたりすると非常に新鮮な感じがします。

SVホルンがインターンを積極的に採っているのはオーナーの本田の意向に沿ったものです。本田は「ホルンは人間を鍛えて送り出す場だ」と常々言っていますが、鍛える対象は選手だけではなく、フロントの人間も含まれます。日本のスポーツをさらに発展させるには、もっとビジネス感覚が必要というのが本田の持論で、それを磨く場にクラブをしたいというのです。それで今年から積極的にインターンを採用し、長い人で半年、短い人で3週間くらいの期間で働いてもらっています。

中学生からの問い合わせには驚く

面接し、一緒に仕事をして感じるのは「スポーツビジネスの最前線で活躍したい」という日本の若者たちの熱気です。寝床はこちらで用意しますが、後は自己負担なので応募してくるのは基本的に学生になりますが、既に30人ほどの若者と面接しました。メールの問い合わせはもっと多くて毎日にように来ます。中学生からも問い合わせがあったのにはびっくりしました。

彼らの熱い志に触れると「近ごろの若い者は」なんて恥ずかしくていえません。クラブとしてはハードルを低くして積極的に受け入れるようにしています。1人でも多くの若者に受けてもらいたいからです。いずれ、そういう若者の中からスポーツ界にイノベーションを起こす人材が育ってくれたらと期待しています。

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