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財布に優しい「ポケモンGO」世代超え人気

スマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」が国内配信されてから、まもなく1カ月。熱狂は沈静化しつつあるが、老若男女問わずスマホ片手に街中でポケモンを探す様子は日常の風景になってきた。スポンサー企業を募り、ゲームの中でさりげなくアピールする新しい広告手法も評判は上々。有料くじ引き式の「ガチャ」に頼りがちな日本のスマホゲームに一石を投じそうだ。

18日午前11時、東京・北千住駅前の喫茶店で53歳の事務機器営業マンが熱心にポケモンを探していた。「中学生の娘に誘われて3日前からゲームを始めた。お金がかからないのに面白いね。営業中にスマホの電池が切れてしまわないか心配だけど」――。

世代を超えた人気となっているポケモンGOの特徴は、この課金要素の薄さだ。ポケモンを引き寄せる「ルアーモジュール」や経験値を引き上げる「しあわせタマゴ」といったアイテムを購入しなくても十分に楽しめる。有料の「ガチャ」で希少なキャラクターやアイテムを引き当てなければゲーム進行が遅れたり、対戦で不利になったりする日本のスマホゲームとは一線を画す。

ポケモンGOは利用者の負担を軽くする一方、「スポンサード・ロケーション」と呼ぶ広告で稼ぐ仕掛けも用意する。提携企業(広告主)が現実の世界に持つ店舗にユーザーを送客し、その見返りに運営会社の米ナイアンティックは提携企業からスポンサー料(広告料)を受け取る。

第1号案件は日本マクドナルドホールディングス。全国約2900店を「ポケストップ」などに設定した。ポケストップにユーザーが立ち寄ると無料でアイテムがもらえる仕組みだ。取り組みが奏功し、7月の既存店売上高は前年同月比で26.6%増えた。

 第2号案件は映画館運営のTOHOシネマズ(東京・千代田)に決まった。復興支援を目的に宮城県など4県とも連携し、震災被害が激しかった沿岸部や歴史遺産をポケストップなどに指定する。大勢のユーザーが被災地を訪れれば、現地での宿泊や買い物で経済効果が見込める。

実はスマホゲームと広告は相性抜群だ。人気スマホゲームは国内のダウンロード数だけでも数千万件に達する。ユーザーがスマホをのぞき込む「視聴者接触回数」も圧倒的に多いとみられ、広告媒体としての価値は非常に高い。遊びの妨げにならない形で広告を潜り込ませれば、消費者が不快に感じるマイナス効果も生じにくい。

利用者だけでなく、広告主からも利益をいただく――。こうしたビジネスモデルを標榜する理由について、ナイアンティックのジョン・ハンケ最高経営責任者(CEO)は「ゲーム内課金に依存すると、ユーザーが疲れてゲームの寿命が短くなる」と話す。ポケモンGOの下地にしたスマホゲーム「イングレス」でも、(1)ゲーム内でのアイテム販売(2)スポンサード・ロケーション(3)世界各地で開くイベントの収入(4)公式グッズ販売、に収益源を分散させている。

一方、くじ引き式の「ガチャ」は日本のゲーム特有の仕組みだ。荒稼ぎしやすいが、海外では歓迎されにくく、結局、日本でしか通用しない事態を招いている側面がある。

国内でも「ガチャは射幸心をあおっている」との批判が根強くある。高額課金しても欲しいアイテムが当たらない「くじ運」の悪い状態が続いたユーザーが、ゲーム開発会社に不信感を募らせる場合もある。

「非常に勇気づけられた」とディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功社長が語るように、ポケモンGOは世界中で億単位のユーザーをつかまえる「スマホドリーム」を証明してみせた。海外市場を攻略したい日本のゲーム会社には学ぶ点が多い。

(企業報道部 新田祐司)

[日経産業新聞8月19日付け]

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